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運輸安全委員会事故調査報告書【H30年1月25日公表】

投稿日時:2018-01-25 00:00:09 (1434ヒット)

【鉄道事項:6件】

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
1 ○東武鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H28.5.18(水)12時11分ごろ
○東京都板橋区
 東上本線 中板橋駅構内 
成増駅発池袋駅行き10両編成の上り750列車の運転士は、中板橋駅を定刻に発車し、力行後、同駅構内の第12号分岐器の制限速度が35km/hであるため、速度約30km/hでノッチオフし、最後部車両が同分岐器を抜けるまで惰行で運転した。
 列車の運転士は、同分岐器を通過後、再力行し、加速後に、客室内に設置されている非常ボタンが扱われたことを認めたため、非常ブレーキを使用して、列車を停止させた。
その後、列車の車掌が車外の状態を確認したところ、5両目の後台車の全2軸が右に脱線していた。
列車には、乗客約400名、運転士1名及び車掌1名が乗車していたが、負傷者はいなかった。
本事故は、列車の前から5両目の後台車右側側ばりに下面から側面上部に達する亀裂が生じていたため、前軸右車輪の輪重が減少して、輪重のアンバランスが拡大していたこと及び半径178mの左曲線への進入によって同車輪の横圧が増加したことにより、同車輪が右レールに乗り上がって右へ脱線したものと考えられる。
 後台車前軸右車輪の輪重が減少したことについては、亀裂により側ばりの強度が低下し、当該箇所の上下荷重を分担できなくなったためと考えられる。
また、側ばりの亀裂発生の要因については、側ばり内部の補強板溶接部に溶接欠陥があった可能性が考えられるが、亀裂破面の損傷等により破面観察による詳細な評価ができなかったことから、特定することはできなかった。
再発防止策 本件亀裂は、定期検査時に側ばり下面板を貫通していた可能性があるが、定期検査では当該箇所が検査対象となっていなかったことから発見されず、更に亀裂が進展して脱線の発生に影響するような大きさまで進展した可能性がある。
よって、本件亀裂が発生した箇所付近の側ばり内部に補強板が溶接されている台車においては、既に行われている定期検査の台車枠探傷検査の対象にその補強板の溶接箇所を追加して、探傷検査を実施することが必要と考えられる。

参考資料1(東武鉄道・東上本線)

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
2 ○紀州鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H29.1.22(日)11時00分ごろ
○和歌山県御坊市
○紀州鉄道線 御坊駅~学門駅間(単線)
御坊駅起点0k468m付近
御坊駅発西御坊駅行き1両編成の下り第17D列車は、御坊駅を10時58分ごろ出発した。
列車の運転士は、御坊駅から約500m進行したところで床下から数回の異音を認めたことから、非常ブレーキを掛けて列車を停止させた。
降車して確認したところ、列車の後台車全軸が右側に脱線していた。
列車には、乗客5名と運転士1名が乗車していたが、負傷者はいなかった。
本事故は、列車が半径160mの左曲線を通過中に、軌間が大きく拡大したため、後台車第1軸及び第2軸の左車輪が左レール(内軌)の右側である軌間内に脱線したものと考えられる。
軌間が大きく拡大したことについては、同曲線中のまくらぎに連続して腐食や割れが発生しており、この影響で犬くぎによるレール締結力が低下していたことにより、列車の走行に伴い発生する横圧によるレールの小返りやレールの移動で、動的に拡大した可能性があると考えられる。
まくらぎに連続して腐食や割れが発生しており、レール締結力が低下していたことについては、軌道部材の検査等で、連続したまくらぎやレール締結装置の不良などにより動的に軌間が拡大し、脱線事故につながるという危険性を同社が十分に把握しておらず、それに応じた軌道整備が速やかに行われていなかったことが関与した可能性があると考えられる。 また、本事故の発生については、次の(1)から(3)も関与した可能性があると考えられる。
(1) 曲線のスラックが比較的大きかったことから、軌間内への脱線に対する余裕が少なくなっていたこと。
(2) 本事故発生場所直前のレール継目に長期にわたり角折れによる大きな通り変位があったことから、列車の走行に伴い発生する著大な横圧が繰り返し発生し、軌間変位の拡大を助長したこと。
(3) 脱線防止レールが、まくらぎ及びレール締結装置の不良や各まくらぎに締結されていなかったことで締結力が低下していたことから、左車輪からの背面横圧によりレールの小返りやレールの移動が発生し、動的にフランジウェー幅が拡大したため、脱線防止の機能が十分に発揮できなかったこと。
再発防止策 (1) 軌道整備の着実な実施
定期検査や線路の巡視等において、まくらぎや締結装置の状態を確認し、状況に応じて犬くぎの打ち換え又は増し打ち、まくらぎの交換及びゲージタイ(軌間保持金具)の設置等を実施する必要があり、それらを確実に実施できる体制を整備しておくことが必要である。
また、まくらぎや締結装置の不良が連続又はスラックの大きい急曲線で発生している場合は、軌間内脱線に対する危険性が特に増加するため、優先して整備を行うよう配慮する必要がある。
(2) 整備基準値の見直しとスラック縮小の検討
現状の線路実施基準に規定している整備基準値について、その値を超過した場合には、早急に軌道整正等の整備が必要な値であると認識し、期限を定めて整備又は応急処置を行う等、超過した場合の取扱いを制定し、それに則り着実に措置を講じることが必要である。
軌間の整備基準値については、車輪のレールへの一定のかかり量を確保するために、スラックに応じて増減させることが望ましく、例えば、本件曲線のようにスラックを25mmとする場合は、旧国鉄における軌間内脱線の対策を参考として、軌間が広がる側の整備基準値(静的値)を+14mmではなく、+9mmとして管理することが望ましい。
また、軌道の改良工事等の機会には、軌間内脱線に対する余裕を増加させるために、スラックを現状の25mmから可能な範囲で縮小することが望ましい。
(3) まくらぎの材質変更
軌間を保持するために、まくらぎについては、木まくらぎに比べ耐久性に優れ、容易な保守が可能であるコンクリート製まくらぎへの交換(数本に1本程度の割合で置き換える部分交換を含む。)等を検討することが望ましい。
(4) 脱線防止レール等の適切な取付け
脱線防止レールについては、内軌に対して規定のフランジウェー幅及び頭頂面の高さを確保でき、同時に内軌に対して十分な取付剛性が得られるよう、ガードレール敷設区間用タイプレート等を用いた適切な取付けとするか、保守の容易性も考え、脱線防止ガードへの交換を検討することが望ましい。
(5) 脱線防止レール等の点検と痕跡を認めた場合の措置
同社においては、脱線防止レール等への車輪の裏リム面との接触痕の有無について、定期検査や線路の巡視における要注意項目として追加し、痕跡が認められた場合には、軌間拡大の要注意箇所と考え、早急に軌間の拡大及びレール締結装置の連続した不良等、軌間内脱線に至るような異常がないかの確認を行い、異常があれば措置を講じる必要がある。

参考資料2(紀州鉄道・紀州鉄道線)

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
3 ○西日本旅客鉄道株式会社
○鉄道人身障害事故
○H29.2.11(土)1時46分ごろ
○広島県三原市
山陽線 糸崎駅構内
工事を行っていた作業員等5名と列車見張員は、日本貨物鉄道株式会社の鳥栖貨物ターミナル駅発大阪貨物ターミナル駅行き25両編成の上り高速貨第58列車が接近してきたため待避していた。同列車が待避箇所を通過する際に、工事指揮者が異音を認めたため確認したところ、列車見張員が線路上に倒れているのを発見した。
一方、同列車の運転士は、同駅を速度約68km/hで定刻(1時46分)に通過し、前方で作業をしている様子が見えたが、左右に振る白色灯を認めたため、待避が完了しているものと思い、運転を継続した。その後、尾道駅通過後、指令の指示により同列車を停止させた。
この事故により、列車見張員が死亡した。
本事故は、碍子取替工事に就いていた列車見張員が、線路閉鎖が行われていない隣接線路に近づき過ぎた位置で立哨していたため、進行してきた列車と接触したことにより発生したものと推定される。
列車見張員が隣接線路に近づき過ぎた位置で立哨していたことについては、同列車見張員は、自らの立哨位置が安全な場所であると思い込んでいた可能性があると考えられる。このことについては、事故発生場所が分岐器上で、線形が複雑であったことが関与している可能性があると考えられるが、同列車見張員が死亡していることから、その理由を明らかにすることはできなかった。
再発防止策 本事故は、列車見張員が接近する列車を認識していたにもかかわらず、立哨位置が線路閉鎖区間の隣接線路に近づき過ぎていたため、進行してきた列車と接触したと推定される。作業に従事する係員の安全確保のためには、各々の係員が規則等に基づいて行動することはもちろんのこと、作業現場の責任者が作業に従事する係員全員の安全の確保に努めることが重要である。
よって、このような事故の再発を防止するために、同社は以下のような対策を講じる必要があると考えられる。
(1) 経験のある列車見張員であっても立哨位置を誤る可能性があることから、列車見張員に対して、作業現場における危険の存在を改めて認識させ、安全な場所を自ら確認して立哨することの重要性を継続して教育する必要がある。
(2) 同社では、列車接近時に工事指揮者が列車見張員の待避完了や立哨位置を確認する規則等を定めていないが、工事等従事者の死傷事故防止等の安全確保は工事指揮者の責務であることから、工事指揮者に対して、作業現場全体の安全確保の重要性を再認識させる必要がある。
列車見張員が作業グループと同一行動を取る場合は、工事指揮者は列車見張員に立哨位置を具体的に指示し、作業現場で工事等従事者が配置についた時に、列車見張員が安全な場所で立哨していることを確認するとともに、線形が複雑な場所で立哨する場合は特段の注意を払うことが望まれる。さらに、列車見張員が立哨位置を誤ったときに、工事指揮者が列車見張員を安全な立哨位置に移動できるようにする観点から、列車接近時に列車見張員の安全が確保されているか、工事指揮者が列車見張員の立哨位置に注意を払うことが望まれる。
(3) 線形が複雑な場所では安全な場所を誤る可能性も考えられることから、工事内容や作業現場周辺の線形を考慮した上で、可能な限り、安全ロープなどの線間防護柵等を活用することについて検討するなど、工事を行う当該線路と列車の走行する隣接線路との境界を明確化することが望まれる。
(4) 事前の計画書において、駅構内平面図等に列車見張員の立哨位置を明記するなど、立哨位置を明確化することが望まれる。

参考資料3(JR西日本・山陽線)

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
4 ○熊本電気鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H29.2.22(水)21時26分ごろ
○熊本県熊本市
藤崎線 藤崎宮前駅~黒髪町駅間(単線)
北熊本駅起点2k227m付近
藤崎宮前駅発御代志駅行き2両編成の下り第59列車の運転士は、ワンマン運転で藤崎宮前駅を出発した直後、黒髪・藤崎間8号踏切道付近を速度約20km/hで運転中に衝撃を感じ、非常ブレーキを使用して列車を停止させた。
停止時点においては、1両目の前台車全軸が右へ脱線していた。また、本事故発生後の調査により、1両目の後台車全軸が一度右へ脱線した後、復線したことが分かった。
列車には、乗客約50名及び運転士1名が乗車していたが、負傷者はいなかった。
本事故は、列車が半径200mの右曲線を通過中に、軌間が大きく拡大したため、1両目前台車第1軸及び後台車全軸の左車輪が軌間内に落下し、軌間を押し広げながら走行した後、後台車全軸については踏切ガードにより復線したものの、前台車第1軸は右に脱線し、続けて前台車第2軸も右に脱線したものと考えられる。
軌間が大きく拡大したことについては、同曲線中でレール締結装置の不良が連続していたことにより、列車走行時の横圧によるレール小返り等で動的に拡大した可能性があると考えられる。
なお、脱線に至る大きな軌間の拡大が発生したことについては、定期検査等で脱線の危険性がある連続したレール締結装置の不良や動的に軌間拡大が増大する危険性を十分に把握できず、それに応じた軌道整備が行われていなかったこと、曲線中のスラックが比較的大きかったことにより軌間内への脱線に対する余裕が少なくなっていたことが関与した可能性があると考えられる。
再発防止策 (1) 軌道整備の着実な実施
軌道部材の検査時や線路巡視時等において、まくらぎの腐食や犬くぎの浮き上がり等を確認し、状況に応じて犬くぎの打ち替えや増し打ち、まくらぎ交換又はゲージタイ(軌間保持金具)の設置等を実施する必要があり、それらを着実に行えるように体制を整備しておくことが望ましい。
なお、これらについては、連続又はスラックの大きい急曲線で発生している場合は軌間内脱線に対する危険性が特に増加するため、優先して整備を行うよう配慮する必要がある。また、曲線部のまくらぎやレール締結装置の管理については、内軌側についても外軌側と同様に注意して管理する必要がある。
(2) まくらぎの材質の変更
軌間を保持するために、まくらぎについては、木まくらぎよりも耐久性、保守の容易性が優れているコンクリート製等のまくらぎに交換(数本に1本程度の割合で置き換える部分交換を含む。)していくことが望ましい。
(3) スラックの縮小についての検討
スラックについては、軌間内脱線への余裕を高めるため、軌道の改良等に合わせて、可能な範囲で縮小することが望ましい。

参考資料4(熊本電気鉄道・藤崎線)

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
5 ○西日本旅客鉄道株式会社
○踏切障害事故
○H29.3.6(月)14時35分ごろ
○岩徳線 玖珂駅~周防高森駅間(単線)
千束第一踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
岩国駅起点18k433m付近
徳山駅発岩国駅行きの上り普通第2234D列車の運転士は、玖珂駅~周防高森駅間を走行中、千束第一踏切道(第4種踏切道)手前で、自転車に乗った通行者を認めて非常ブレーキを使用したが、列車は同通行者と衝突した。
この事故により、同通行者が死亡した。
本事故は、踏切遮断機及び踏切警報機が設けられていない第4種踏切道である千束第一踏切道に列車が接近している状況において、自転車に乗った通行者が同踏切道内に進入したため、列車と衝突したことにより発生したものと推定される。
同通行者は、列車が接近している状況において、踏切道の直前で一時停止せず、列車の接近を十分確認しないまま同踏切道内に進入したものと考えられるが、その理由については、同通行者が死亡しているため明らかにすることはできなかった。
再発防止のために望まれる事項 踏切遮断機及び踏切警報機が設けられていない第4種踏切道は、廃止又は踏切保安設備の整備を行うべきものである。本件踏切についても、廃止又は第1種化の検討を継続的に行い、実施していくことが望まれる。

参考資料5(JR西日本・岩徳線)

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
6 ○九州旅客鉄道株式会社
○踏切障害事故
○H29.6.27(火)時分ごろ
○鹿児島県鹿児島市
指宿枕崎線 坂之上駅~五位野駅間(単線)
向原第2踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
鹿児島中央駅起点12k689m付近
鹿児島中央駅発喜入駅行きの下り普通気第365D列車の運転士は、坂之上駅~五位野駅間を走行中、向原第2踏切道(第4種踏切道)に進入してくる歩行者を認め、直ちに気笛を吹鳴するとともに非常ブレーキを使用したが、列車は同歩行者と衝突した。
この事故により、同歩行者が死亡した。
本事故は、踏切遮断機及び踏切警報機が設けられていない第4種踏切道である向原第2踏切道に列車が接近している状況において、歩行者が同踏切道内に進入したため、列車と衝突したことにより発生したものと推定される。
列車が接近している状況において、同歩行者が同踏切道内へ進入した理由については、同歩行者が死亡していることから明らかにすることはできなかった。
再発防止のために望まれる事項 踏切保安設備(踏切遮断機及び踏切警報機)を有しない第4種踏切道は、できるだけ早期に統合等により廃止するか、あるいは踏切保安設備を設置すべきものである。
同社と同市は、平成18年度から踏切の統廃合について協議を行っており、これまでに7か所の第4種踏切道を第1種に格上げ又は廃止してきた。
同社及び同市は、過去の事故を受けて本件踏切の安全対策を実施しているが、本事故が発生したことを考慮し、本件踏切に近接する向原第3踏切道へのう回路を整備して本件踏切を廃止することについて、地元町内会の理解の下、確実に実施していくことが望まれる。

参考資料6(JR九州・指宿枕崎線)