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運輸安全委員会事故調査報告書【H27年1月29日公表】

投稿日時:2015-01-29 00:00:14 (1292ヒット)

【鉄道事故:4件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○関東鉄道株式会社
○踏切障害事故
○H26.6.9(月)17時47分ごろ
○茨城県下妻市
常総線 大宝(だいほう)駅~騰波(とば)ノ江(のえ)駅間  北大宝8踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
取手駅起点40k796m付近
関東鉄道株式会社の守谷駅発下館駅行き1両編成の下り快速第7141列車は、平成26年6月9日、大宝駅を定刻に通過した後、力行して速度約80km/hに達した時点で惰行にした。北大宝8踏切道の約30m手前で、同踏切道の左側から進入してくる小型自動車を認めたため、直ちに気笛を吹鳴するとともに非常ブレーキを使用したが間に合わず、列車の前面が同自動車の右側面と衝突し、そのまま同自動車を押しながら約130m走行して停止した。
この事故により、同自動車の運転者が死亡した。
本事故は、列車が第4種踏切道である北大宝8踏切道に接近しているにもかかわらず、小型自動車が同踏切道に進入したため、列車と衝突したことにより発生したものと考えられる。
同自動車の運転者が、踏切に進入する前に列車の接近を目視により確認していたかどうか、また、列車接近中にもかかわらず、なぜ自動車を踏切に進入させたかについては、事故直前の運転者の行動が不明であるため、明らかにすることはできなかった。
2 ○京王電鉄株式会社
○鉄道人身傷害事故
○H25.2.13(水)  14時45分ごろ
○東京都府中市
○京王線 武蔵野台駅構内
京王電鉄株式会社の高尾線高尾山口駅発京王線新宿駅行き10両編成の上り準特急第3132列車は、平成25年2月13日(水)、通過駅である武蔵野台駅のプラットホーム終端部付近を走行中、列車の運転士は前方すぐの線路左脇から作業者1名が上り線路に立ち入るのを認めて非常制動をとったが間に合わず、列車は同作業者と衝突し、同作業者は死亡した。 本事故は、請負作業に従事していた下請会社の作業者が列車と列車との運行の間合いで線路作業中、列車の接近後も作業を継続し、建築限界外の線路脇の作業場所から線路内に立ち入ったため、対向方向から進入してきた別の列車と衝突したものと推定される。
同作業者のそうした行動は、待避中における作業の中断等触車事故防止のための基本動作が十分身に付いていなかったためであると推定される。
また、当時、作業の現場では、列車の接近に対して同作業者が線路左脇に1人で居る状態となっていたことから、同作業者の線路への接近、立入を制することもできなかったものと考えられる。こうした状況が生じた背景には、作業の安全に係る管理・監督が作業の現場全体に十分に行き届いていなかったことが関与したものと考えられる。
と考えられることから、これらの要因が重なったことにより発生したものと考えられる。
3 ○大井川鐵道株式会社
○列車脱線事故
○H25.11.24(日)  12時18分ごろ
○静岡県静岡市
○井川(いかわ)線 井川駅構内
大井川鐵道株式会社の井川線千頭駅発井川駅行き9両編成の下り旅客第203列車は、平成25年11月24日、閑蔵(かんぞう)駅~井川駅間を走行中に軌道上の岩塊と衝突したが、その後の点検で車両に異常が見られなかったことから運転を継続した。同列車が井川駅に進入した頃から車両より音がして、しばらくの後衝撃があったため、列車の運転士は非常ブレーキを使用して列車を停止させた。
  列車は、1両目前台車の全2軸が脱線し、その台車のブレーキ装置は損壊していた。
  列車の乗客約110名、運転士1名及び車掌2名に、死傷者はいなかった。
本事故は、列車の走行中、軌道上の岩塊が車両の床下に巻き込まれて1両目前台車のブレーキ装置を支える金具に衝突し、脱落させたため、その後の走行により同装置の一部がレール面下まで垂下して分岐器の分岐線側のリードレールに当たり、台車がそのレールに沿って押されたことから、台車の全2軸が脱線したものと推定される。
その脱線に至る過程において、運転士は列車と岩塊との衝突に気付きつつも運転を継続したこと、また、その後の点検で台車のブレーキ装置を支える金具の脱落に気付かなかったことが、本事故の発生につながったものと考えられる。
また、軌道上の岩塊については、線路脇の斜面にて安定性を失って発生した落石であったものと考えられる。
4 ○日本貨物鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H25.9.19(木)  18時05分ごろ
○北海道亀田郡七重(ななえ)町
○函館線 大沼駅構内
日本貨物鉄道株式会社の帯広貨物駅発熊谷貨物ターミナル駅行き18両編成の臨高速貨第8054列車は、平成25年9月19日、東室蘭操車場を定刻に出発した後、大沼駅の2番線に定刻より2分遅れて17時15分に到着した。
その後、列車の運転士は、列車を定刻に出発させて速度約20㎞/hで力行運転中、後ろから引っ張られるような感覚とともに、運転台の圧力計によりブレーキ管圧力の低下とブレーキシリンダ圧力の上昇を認めたため、直ちにマスコンをオフにしたところ、その直後に列車は停止した。
停止後、運転士が列車から降りて確認したところ、列車は、6両目の後台車全2軸、7両目の前台車全2軸、8両目の全4軸及び9両目の前台車全2軸が脱線していた。
列車には運転士1名が乗務していたが、負傷はなかった。
本事故は、事故現場付近において、通り変位及び軌間変位が整備基準値を大幅に超過した状態であったにもかかわらず、軌道が整備されていなかったため、整備基準値を大幅に超過した通り変位の影響により、列車の走行時に著大な橫圧が作用して軌間拡大が進みやすい状態であったところに、本件列車が走行時に発生した著大な橫圧により、レールの横移動と小返りが発生したことから、6両目後台車の左車輪が軌間内に脱線したことにより発生したと推定される。
通り変位等が整備基準値を大幅に超過していたにもかかわらず、軌道が整備されていなかったことについては、直近の軌道変位検査の結果を受けた、必要な整備計画が立てられていなかったことによるものと考えられる。
このことは、検査担当者及び作業計画担当者のみならず大沼保線管理室全体において、副本線に対しても、実施基準等を遵守して検査結果に基づき軌道の整備をするという軌道の保守に従事する者としての基本的な認識が欠如していたこと、さらに、所長代理(助役)などが、検査結果やそれを受けた整備の実施状況を確認していなかったことによるものと考えられる。
また、このことについては、函館保線所が、大沼保線管理室の軌道の保守に係る業務を適切に管理していなかったことによるものと考えられる。
さらに、このことについては、本社保線課が現業機関の軌道の保守に係る業務実態を十分に確認していなかったことが関与していた可能性があると考えられる。
なお、列車が大型トレーラと衝突したことについては、踏切内に残されて列車の進路を支障していたシートに覆われた状態の鉄板の厚さが薄く、列車の運転士は、支障物として認識し難かったこと、また、障害物としての荷台及び鉄板の位置が、踏切障害物検知装置の検知範囲内になく、検知しなかったことから、早期に非常ブレーキを使用するに至らなかったことが影響したものと考えられる。

参考資料1 (関東鉄道 常総線)

参考資料2 (京王電鉄 京王線)

参考資料3 (大井川鉄道 井川線)

参考資料4 (JR貨物 函館線)