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運輸安全委員会事故調査報告書【H25年7月26日公表】

投稿日時:2013-07-26 00:00:06 (1259ヒット)

【鉄道事故:3件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○四国旅客鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H24.6.25(月)5:20ごろ
○愛媛県伊予市
予讃(よさん)線 高野川(こうのかわ)駅~伊予上灘(かみなだ)駅間(単線)
高松駅起点216k093m付近
四国旅客鉄道株式会社の予讃線松山駅発伊予長浜駅行き1両編成の下り回送第4911D列車は、平成24年6月25日、松山駅を定刻(4時57分)に出発した。
列車の運転士は、高野川駅~伊予上灘駅間を走行中、線路を支障する電柱及び土砂を認め、直ちに非常ブレーキを使用したが間に合わず、列車は土砂等の混じった岩塊に乗り上げて全4軸が脱線し、停止した。
列車には、運転士1名が乗車していたが、負傷はなかった。車両は、前端の床下機器等が損傷した。
本事故は、線路左側の切土斜面の一部が崩壊して、落石防護網の耐荷重を超える大量の岩塊等が軌道内に流入し堆積したため、列車がこれに乗り上げて脱線したことにより発生したものと推定される。
斜面が崩壊したのは、斜面を構成し、節理を有する岩盤が、経年による風化の進行により変状して安定性を失い、岩盤崩壊に至ったものと推定される。
2 ○東日本旅客鉄道株式会社
○列車火災事故
○H24.4.4(水)9:55ごろ
○新潟県柏崎市
○信越線 鯨波(くじらなみ)駅構内
東日本旅客鉄道株式会社の直江津駅発長岡駅行き下り普通第1329M列車(3両編成)の運転士は、平成24年4月4日9時55分ごろ、青海川駅~鯨波駅間を強風による速度規制のため速度約20km/hで運転中、鯨波トンネルを出た後に異音及び架線停電を2回繰り返したのに気付いた。
同乗していた運転士らが後方を確認したところ、2両目前寄りパンタグラフ付近から火炎を認めたため、運転士は非常ブレーキを使用して列車を停止させた。
2両目車両は、パンタグラフ付近の屋根及び天井が燃焼していたため、消火器を使用して消火活動を行ったが消えなかった。その後、消防が消火活動をして鎮火した。
列車には、乗客41名及び乗務員等6名が乗車していたが、死傷者はいなかった。
本事故は、列車のパンタグラフ支持碍子及びパンタグラフ受台において、地絡によりパンタグラフあるいはパンタグラフ取付台から屋根外板へアーク放電が発生した可能性が考えられ、これにより、火災が発生したものと考えられる。
地絡が発生した原因については、海からの断続的な強風により飛来塩分及び波しぶきがパンタグラフ支持碍子及びパンタグラフ受台等に付着し、海塩汚損が保たれたまま湿潤状態になったことから、絶縁抵抗が低下し、パンタグラフ取付台と屋根外板の間に電流経路が形成された可能性があると考えられる。
3 ○富山地方鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H24.7.28(土)14:44ごろ
○富山県富山市
○上滝(かみだき)線 小杉駅~上堀(かみほり)駅間(単線)
南富山駅起点2k214m付近
富山地方鉄道株式会社の上滝線岩峅寺(いわくらじ)駅発電鉄富山駅行き2両編成の上り普通第624列車の運転士は、平成24 年7月28日、ワンマン運転で上堀駅に停車する際、車両に異音と衝撃を感知したため非常ブレーキを使用し、列車を直ちに停止させた。停車後に確認したところ、車両の全8軸が脱線していた。
列車には、乗客約20名及び運転士1名が乗車していたが、死傷者はいなかった。
本事故は、反向する右曲線につながる左曲線の出口側緩和曲線において、レールの横方向への変位(通り変位)が整備基準値を超え、またレール締結装置の締結力が低下していたため、列車の走行に伴う横圧の作用により軌間が拡大し、列車の内軌側の左車輪が軌間内に脱線したものと考えられる。
これらは、以下によるものと考えられる。
(1) 現場付近の線路では、事故発生2か月前のレール交換後に締結装置の締め直し管理がされなかったことから、締結装置のボルトが列車の運行に伴う横圧を繰り返し受けて緩んだこと。
(2) レール交換の時点で軌道の通り変位が整備基準値を超えていたもののそのまま運行に供され、また、その後の軌道変位に係る定期検査は事故発生の直前に行われたが測定データは未解析であったことから、現場の軌道変位の超過が是正されなかったこと。
勧告 運輸安全委員会は、本鉄道事故の調査結果を踏まえ、輸送の安全を確保するため、富山地方鉄道株式会社に対し、運輸安全委員会設置法第27条第1項の規定に基づき、以下のとおり勧告する。
(1) 軌道変位等については、測定を行い次第計画的に解析・評価するとともに、不適切な箇所の補修計画を立て、同箇所を速やかに是正するなど、軌道の整備・維持の管理態勢を確実に構築すること。
(2) 同社は、社内の「安全マネジメント委員会」を活用するなど経営管理部門が積極的に関与して、次の事項の取組計画を具体的に作成し、それらの実施状況を適切に管理すること。
 ① 平成20年に発生した同社の本線中加積駅構内列車脱線事故に対し、同社が定めた再発防止対策の各項目
 ② 軌道内の作業後における確認の徹底及びPCまくらぎの締結装置の締結管理、並びに上記(1)で構築した軌道の整備・維持の管理態勢

※運輸安全委員会設置法第27条第1項(原因関係者への勧告)

委員会は、事故等調査を終えた場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、航空事故等、鉄道事故等若しくは船舶事故等の防止又は航空事故、鉄道事故若しくは船舶事故が発生した場合における被害の軽減のため講ずべき措置について原因関係者に勧告することができる。