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運輸安全委員会事故調査報告書【H26年5月30日公表】

投稿日時:2014-05-30 00:00:41 (1257ヒット)

【鉄道事故:2件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○長崎電気軌道株式会社
○車両脱線事故(道路障害に伴うもの)
○H25.7.31(水)14時56分ごろ
○長崎県長崎市
大浦支線 築町(つきまち)停留場~市民病院前停留場間
入江町(いりえまち)起点0k044m付近
長崎電気軌道株式会社の蛍(ほたる)茶屋(ぢゃや)停留場発石橋停留場行き1両編成の第5001号電車は、平成25年7月31日、ワンマン運転で蛍茶屋停留場を14時41分ごろ出発した。電車の運転士は、築町停留場から市民病院前停留場に向け速度約21km/hで力行(りっこう)運転中、前方の交差点において、右折しようと軌道敷内に左から進入してくるバスを認めたため、直ちに気笛を吹鳴するとともに非常ブレーキを使用したが、電車はバスと衝突し、右へ脱線して停止した。
電車には乗客約60名及び乗務員1名が乗車しており、このうち乗客11名が負傷した。また、バスには乗客6名及び乗務員1名が乗車しており、このうち乗客5名が負傷した。
電車は前面右側が損傷し、バスは車体右側面が損傷したが、火災の発生はなかった。
本事故は、軌道敷がある交差点において、その付近に停車しているバスによって見通しが良くない状況で、バス運転者が、軌道敷を横断してバスを右折させようとした際、交差点に進行してくる電車を十分に確認せずバスを交差点内に進入させて電車の進行を妨げる状況になったため、電車の運転士がバスを認めて直ちに非常ブレーキを使用したものの間に合わずバスに衝突し、前台車第1軸が右へ脱線したものと考えられる。
2 ○九州旅客鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H24.10.14(日)22時00分ごろ
○鹿児島県鹿児島市
鹿児島線鹿児島中央駅構内
門司港駅起点396k547m付近
九州旅客鉄道株式会社の鹿児島中央駅発川内(せんだい)駅行き2両編成の上り普通第2476M列車は、平成24年10月14日、ワンマン運転で、鹿児島中央駅を定刻(22時00分)に出発した。
列車は、出発後、同駅構内の左曲線を速度約25km/hで通過した。その後、列車の最前部が79号ロ分岐器を通過した付近で運転士は乗客の悲鳴のような声に気付き、車内ミラーで後方を確認したところ、車両の連結部の幌が右に大きく傾いていたため、ブレーキを使用して停車させた。
運転士が列車の状況を確認したところ、2両目後台車は本来の進路を外れた線路上にあり、第2軸が右へ脱線していた。
列車には乗客157名、乗務員1名が乗車していたが、負傷者はいなかった。
本事故は、列車の2両目後台車第1軸が、左曲線の外軌(右レール)に乗り上がり、外軌の右へ脱線した後、それに引きずられて第2軸が外軌に乗り上がり右へ脱線した可能性があると考えられる。その後、第1軸は分岐器で異線側に復線して停止したものと考えられる。
列車の2両目後台車第1軸が、左曲線の外軌に乗り上がったことについては、
(1) 左曲線の通り変位が整備基準値を超えており、かつ、その曲線の右(外側)に大きくなっていたことから外軌側横圧が増加した、
(2) 左曲線の平面性変位が整備基準値を超えており、かつ、外軌側の輪重が減少しやすい方向に大きくなっていたことから輪重が減少したことにより発生したものと考えられる。また、乗り上がり開始地点付近の道床の噴泥、犬くぎの浮き及びまくらぎの一部腐食等があり、レールとタイプレート間に多数あった隙間等が関与したと考えられる。さらに、車両の軸ばねのばね定数が経年により大きくなっていたことが関与した可能性があると考えられる。
なお、2両目後台車については、列車の静止輪重比は同社が定める管理値内であったが、前台車の各軸の静止輪重が、右車輪(外軌側)の方が左車輪(内軌側)より大きかったのに対し、各軸の静止輪重が、左車輪(内軌側)の方が大きかったことから、外軌側の橫圧が大きくなり脱線の発生に影響した可能性があると考えられる。