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運輸安全委員会事故調査報告書【H22年10月29日公表】

投稿日時:2010-10-29 00:00:18 (1431ヒット)

会員の皆様へ

 今回、運輸安全委員会から「鉄道関係事故報告書を多くの鉄道関係者に見て欲しいので協力をお願いしたい。ついては毎月報告書の概要を協会に送ります。」との依頼を受けました。事故内容は鉄道全般で電気に直接関係しないものもありますが、概要は要領良くまとめられてわかりやすいので原文のまま掲載いたします。また詳細を知りたい方は当協会ホームページの「リンク集」から「運輸安全委員会」にアクセスして頂ければご覧になれます。今後継続して情報を提供を行って参りますので活用頂けるよう宜しくお願い致します。

社団法人 日本鉄道電気技術協会  専務理事 安斎信雄

番号 鉄道事業者、インシデント種類、 発生日時・場所・列車 インシデント概要 原因
1 ○豊橋鉄道株式会社
○サンプル
○車両障害  鉄道事故等報告規則第4条第1項第8号の「車両の走行装置、ブレーキ装置、電気装置、連結装置、運転保安設備等に列車の運転の安 全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等が生じた事態」に係る鉄道重大インシデント
○H21.10.2(金) 8:35ごろ
○愛知県田原市
渥美線 豊島(としま)駅~神戸(かんべ)駅間(単線)
新豊橋駅起点16k528m付近
○三河田原(みかわたはら)駅発新
豊橋(しんとよはし)駅行き(3両編成)
列車の運転士は、走行中に車掌から旅客乗降用扉が開いている旨の報告を受けたため直ちに非常ブレーキで停止し、車内を確認したところ、先頭車両の左側の扉が開いている状況を認めた。列車には乗客約60名が乗車していたが転落等はなく、死傷者はなかった。 ドアの連結ピンが脱落したためドアが固定されなくなり、列車運転中の衝動等によりドアが開いたものと推定される。連結ピンの脱落防止のために使用されていた割りピンが破断し抜けたために、連結ピンが脱落したものと考えられる。割りピンが破断したのはドア開閉時の力の一部がせん断力として繰り返し作用したためと考えられる。
2 ○九州旅客鉄道株式会社
○車両障害
 鉄道事故等報告規則第4条第1項第8号の「車両の走行装置、ブレーキ装置、電気装置、連結装置、運転保安設備等に列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等が生じた事態」に係る鉄道重大インシデント
○H21.12.5(土) 15:32ごろ
○長崎県東彼杵(そのぎ)郡東彼杵町
大村線 彼杵駅~川棚(かわたな)駅間(単線)
早岐(はいき)駅起点15k680m付近
○長崎駅発佐世保駅行き(2両編成)
列車の運転士は、走行中に戸閉め表示灯の滅灯を認めたため、直ちに非常ブレーキで停止し、車内を確認したところ、旅客乗降用扉が約2cm開いている状況を認めた。列車には乗客約40名が乗車していたが転落等はなく、死傷者はなかった。 ドアの戸閉め機械のピストン棒の接手ねじが破断したことにより、ドアを閉める力が作用しなくなったため、走行中にドアが開いたものと考えられる。  接手ねじの破断は疲労破壊によるものと考えられ、ドアが閉まる際に想定していなかった曲げが繰り返し接手ねじに作用したため、強度不足となっていたものと考えられる。また、接手ねじの材料に設計図面の材料よりも疲労強度の低い可能性があるものが用いられていたことが関与したと考えられる。  想定していなかった曲げが作用したのは、部品相互の位置関係や部品の摩耗が影響していたためと考えられる。
3 ○長崎電気軌道株式会社
○信号冒進
 軌道事故等報告規則第2条第2号の「本線路を運転する車両が停止信号を冒進し、他の車両の進路を支障した事態」及びその他(軌道事故等報告規則第2条第7号の「前各号に掲げる事態に準ずる事態」に係る鉄道重大インシデント
○H22.1.9(土) 18:03ごろ及び18:16ごろ
○長崎県長崎市
大浦支線 大浦海岸通り停留場~大浦天主堂下停留場間(単線)
築(つき)町(まち)停留場起点0k644m付近
○A車
:蛍(ほたる)茶屋(ぢゃや)停留場発石橋停留場行き(1両編成)
B車
:石橋停留場発蛍茶屋停留場行き(1両編成)
C車
:蛍茶屋停留場発石橋停留場行き(1両編成)
本件は、同一単線区間において、単線区間に進入の可否を示す閉そく信号機の停止信号を冒進したのちに、当該区間に他の車両が存在しているにもかかわらず、そのまま運行を継続したため、結果的に1閉そく区間に2車両が運行するという事態が2回発生したものである。 本重大インシデントは、最初に、単線区間を先行するA車両が存在しているにもかかわらず、後続のB車両の運転士が、他の灯火を閉そく信号機と誤認したまま停止信号を冒進したこと、その後、同社の規定に反して保安方式を変更しないまま、誤った運転方法により運行を継続したこと、さらに後続のC車両の運転士に正確な状況が伝わらなかったため、当該区間にまだ先のA車両が存在している状態のところにC車両が進入したことにより、単線区間に2車両が存在する事態が2度生じたものと推定される。  同社において規定されている保安方式の変更が行われなかったことについては、信号冒進が発生した際の運転取扱いを詳細に文書で作成していないこと、及び社員に指導・教育が適切に行われていなかったことが関与したものと考えられる。  また、信号を冒進したことは、信号確認が意識を持たず漫然と行われていたこと、および信号機が確認しにくい位置に建てられていた等が関与した可能性が考えられる。

※)鉄道重大インシデントの番号2及び番号3の報告書は所見あり。

鉄道重大インシデント概略図