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運輸安全委員会事故調査報告書【H29年2月23日公表】

投稿日時:2017-02-23 00:00:18 (1234ヒット)

【鉄道事故:4件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○長良川鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H28.4.15(金)19時25分ごろ
○岐阜県美濃市
 越美南線 母野駅~洲原駅間(単線)
美濃太田駅起点25k608m付近
北濃駅発美濃太田駅行き1両編成の上り1020列車は、ワンマン運転により母野駅を定刻(19時23分)に出発した。
その後、列車の運転士は母野駅から洲原駅間を速度約50km/hで惰行運転中、須原トンネル内で異音とともに大きな揺れを感じたため、直ちに非常ブレーキを使用し、列車を停止させた。列車の停止後、運転士が降車して列車の周囲を確認したところ、後台車にある全2軸が左側に脱線していた。
列車には、乗客2名及び運転士1名が乗車しており、この事故により運転士が負傷した。
本事故は、本件列車がトンネル内の円曲線区間を走行している際、
(1) 曲線中で定常的に発生する外軌側の横圧が、比較的大きな通り変位の存在により更に増加していたこと、
(2) 輪重減少を助長する比較的大きな水準変位が存在していた軌道において、レール締結装置の締結ボルトの緩み及び軌道パッドの脱落が連続していたことにより、列車走行時に軌道の水準変位が更に大きくなったこと、
これらに加えて、
(3) 本件列車の後台車の通過時に、左レール(外軌)が折損していたため軌道の水準変位が更に増加したこと
により、後台車にある第3軸の左車輪において輪重が大きく減少して脱線係数が大きくなったため、同車輪がレールを乗り越えて脱線に至った可能性があると考えられる。
トンネル内のレールが折損したことについては、同社が定期的に行っている軌道検査において、腐食によるレール断面積の減少率がレール更換の判断基準を大幅に超過した状態となっていたことに気付くことができずに、更にはレールの腐食から生じたと考えられる亀裂や連続したレール締結装置の締結ボルトの緩み及び軌道パッドの脱落を見落としたことが関与した可能性があると考えられる。
再発防止策 (1) レールの折損対策について
(ア) 本事故は、トンネルからの漏水による局所的なレールの腐食と減肉に起因してレールが折損したことが原因であることから、同社は、トンネルからの漏水位置等においては、重点的にレールの腐食状態を確認するとともに、必要に応じて、レールの更換も含めレールの機械的強度の減少を適切に管理することが必要である。
また、レールの腐食を防止するため、トンネルから滴下する漏水を抑止すること、レールに防腐剤などを塗布する防食工法を取り入れることも再発防止に有効である。
(イ) 本事故は、同社が実施基準に規定された更換基準に基づき定量的な判断を行っていなかったことが、レールの腐食が進んでいたにもかかわらず、緊急に更換する必要性を認識することができなかったことなどに関与している。
その一方で、同社の定めたレール断面積の減少率によりレール更換を判断する方法は、実務上、頻繁に実施することが難しい側面もあることから、同社においては、本事故で折損したレールを断面積の減少に関する標本として補助的に活用するなどして、同社が実施基準で規定しているレール更換に関する判断基準に達する前に、計画的にレール更換を行うことが必要である。
(ウ) 本事故は、同社がレールの腐食の進行を懸念していたにもかかわらず、更換用のレールを入手してからレールを更換する予定日まで約4か月も要し、この間に本事故が発生している。このことから、同社はレール更換計画から実際にレールを更換するまでの着手期間を可能な限り短縮するか、これが難しい場合には、徒歩巡回などでレールの変状を注視するとともに、必要に応じてレールを補強する必要がある。
また、同社では新品で入手することが困難な種類のレールを使用していたことが、更換用レールを速やかに入手できなかったことに関与した可能性が考えられることから、容易に入手できる種類のレールに統一するなど計画的に軌道の更新を図ることが望まれる。
(2) 丁寧な軌道検査の実施について
本事故は、連続したレール締結装置の締結ボルトの緩み及び軌道パッドの脱落が、列車の走行による動的な荷重変動によるレールの曲げ変位を大きくし、急速な脆性破壊を生じさせてレールを折損させたことに関与した可能性がある。このことから、連続したレール締結装置の締結ボルトの緩み及び軌道パッドの脱落など、整備基準値が設けられていない軌道の検査項目においても、徒歩巡回で見落とさないよう丁寧に検査を行う必要がある。
(3) 情報伝達の迅速化について
本事故当日の始発列車の運転士は、本事故現場付近を走行中に異音を感じ、終了点呼において書面で申告したが、申告日を間違って記載したことにより、結果的に同社内での情報伝達が遅れた可能性がある。このことから、異状を感知したら速やかに本社に報告するよう、情報伝達の仕組みを改善することが望まれる。

参考資料1 (長良川鉄道・越見南線)

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
2 ○秩父鉄道株式会社
○踏切障害事故
○H28.6.17(金)14時20分ごろ
○埼玉県熊谷市
○秩父本線広瀬川原駅構内(単線)
石原No.12踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
熊谷駅起点4k035m付近
影森駅発羽生駅行きの上り普通第1534列車の運転士は、広瀬川原駅構内を走行中、石原№12踏切道(第4種踏切道)に歩行者を認め、非常気笛及び非常ブレーキを使用したが、列車は同歩行者と衝突した。
この事故により、同歩行者が死亡した。
本事故は、第4種踏切道である石原№12踏切道に、列車が接近している状況において歩行者が進入したため、列車の前面右側と衝突したことにより発生したものと推定される。 列車が接近している状況において、歩行者が踏切道内に進入した理由については、列車の接近に気付いていなかった可能性が考えられるが、歩行者が死亡したため詳細を明らかにすることはできなかった。
再発防止策 同市によると、平成28年12月の議会で市道認定と道路認定を解除し、本件踏切が廃止されたとのことである。

参考資料2 (秩父鉄道・秩父本線)

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
3 ○九州旅客鉄道株式会社
○踏切障害事故
○H28.8.22(月)8時49分ごろ
○鹿児島県指宿市
指宿枕崎線頴娃駅~入野駅間(単線)
第2本屋敷踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
鹿児島中央駅起点62k977m付近
西頴娃駅発指宿駅行きの上り気第5324D列車の運転士は、頴娃駅~入野駅間を速度約44km/hで走行中、第2本屋敷踏切道(第4種踏切道)に進入してきた軽自動車を認め、非常ブレーキを使用したが、列車は同軽自動車と衝突した。
この事故により、同軽自動車の運転者が死亡し、同乗者が負傷した。
本事故は、列車が第4種踏切道である第2本屋敷踏切道に接近している状況において、軽自動車が同踏切道内に進入したため、列車と衝突したことにより発生したものと推定される。
同軽自動車の運転者が列車接近中の同踏切道内に同軽自動車を進入させたことについては、同軽自動車の運転者が死亡していることなどから明らかにすることができなかった。

参考資料3 (JR九州・指宿枕崎線)

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
4 ○津軽鉄道株式会社
○踏切障害事故
○H28.9.6(火)9時45分ごろ
○津軽鉄道線津軽飯詰駅~毘沙門駅間(単線)
五所川原起点6k100m踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
津軽五所川原駅起点6k100m付近
津軽五所川原駅発津軽中里駅行き1両編成の下り第5列車の運転士は、津軽飯詰駅~毘沙門駅間を走行中、五所川原起点6k100m踏切道(第4種踏切道)に進入してくる軽自動車を認め、直ちに非常ブレーキを使用したが、同列車は同軽自動車と衝突した。
この事故により、同軽自動車の運転者1名が死亡した。
本事故は、第4種踏切道である五所川原起点6k100m踏切道に、列車が接近している状況において軽自動車が進入したため、列車と衝突したことにより発生したものと推定される。
列車が接近している状況において、同軽自動車が踏切道内に進入したことについては、軽自動車の運転者が死亡していることから、その詳細を明らかにすることはできなかった。 しかしながら、線路際の雑木林などにより列車接近方向の見通しが良くなかったことが、本件踏切手前における運転者の十分な左右安全確認を阻害したことに、本事故当時が雨天であったこと及び農道が右に曲がりながら本件踏切の直前で上り急勾配となっていたことが、運転者の列車接近に対する注意力を低下させる要因となったことに、それぞれ関与した可能性が考えられる。

参考資料4 (津軽鉄道・津軽鉄道線)