一般社団法人 日本鉄道電気技術協会

お知らせ

TOP > お知らせ > 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年3月28日公表】

運輸安全委員会事故調査報告書【H26年3月28日公表】

投稿日時:2014-03-28 00:00:11 (1199ヒット)

【鉄道事故:1件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原因
1 ○東日本旅客鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H25.4.6(土)20時34分ごろ
○新潟県妙高市
○信越線妙高高原(みょうこうこうげん)駅~関山(せきやま)駅間(単線)
高崎駅起点155k712m付近
東日本旅客鉄道株式会社の長野駅発直江津駅行き6両編成の下り普通第3325M列車は、平成25年4月6日、妙高高原駅を定刻に出発した。
妙高高原駅を出発後、運転士は、速度約65km/hで惰行運転中、列車が左曲線に進入した際、車体が浮き上がるような感じを受けたため、非常ブレーキを使用して停車させた。運転士が降車して車両を確認したところ、列車は先頭車両の前台車全2軸が右へ脱線していた。
列車には乗客25名及び乗務員2名(運転士及び車掌)が乗車していたが、負傷者はいなかった。
本事故は、斜面で発生した土砂崩壊によって線路内へ流入した土砂等に列車が乗り上げたため、脱線したことにより発生したものと考えられる。
斜面で土砂崩壊が発生したことについては、斜面より標高が高い農地等(私有地等)の一部から水があふれ、同社の用地である斜面の上部への集中的な流水と、これに伴う土留壁背後の地盤の地下水位の上昇により、土留壁の基礎周りに浸透水の圧力が作用して、この付近の地盤が破壊され、斜面の表面の土層が崩壊した可能性があると考えられる。

【鉄道重大インシデント:2件】

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 インシデント概要 原因
1 ○東日本旅客鉄道株式会社
○車両障害(鉄道事故等報告規則第4条第1項第8号の「車両の走行装置、ブレーキ装置、電気装置、連結装置、運転保安設備等に列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等が生じた事態」に係る鉄道重大インシデント)
○H24.6.4(月)16時54分ごろ
○福島県郡山市
○磐(ばん)越(えつ)東線(とうせん)郡山駅~舞木(もうぎ)駅間(単線)
いわき駅起点81k600m付近
東日本旅客鉄道株式会社の磐越東線郡山駅発小野(おの)新町(にいまち)駅行き4両編成の上り普通第738D列車は、平成24年6月4日、郡山駅を定刻16時49分に出発し、隣駅の舞木駅へ向かった。
列車の運転士は、阿武隈川に架かる橋(きょう)梁(りょう)上を惰行運転し、先頭車両が阿武隈川の対岸に差し掛かった付近で、運転士知らせ灯が滅灯したことに気付き、旅客用乗降口の扉に故障が発生したものと判断して、直ちに非常ブレーキを掛けて列車を停止させた。
列車が停止した後に、車掌が列車の状況を確認したところ、3両目右側の車側表示灯が点灯しており、3両目右側の前後に2箇所ある旅客用乗降口の扉のうち、後ろ(3位側)の1箇所が全開していた。
列車には、乗客約300名、運転士1名、車掌1名及び便乗運転士1名が乗車していたが、負傷者はいなかった。
本重大インシデントは、列車の3両目車両のドアを開閉するための戸閉め制御回路の電気配線の被覆が破れて素線が露出して車体に接触し、さらに先頭車両において電動ミラーの電源線が車体と接地した状態となったため、車体を経由して戸開電磁弁が加圧されて、3両目車両のドアが開いたものと考えられる。
なお、電動ミラー側の電源線が車体と接地した状態となったことについては、電動ミラーの遠隔制御を行う操作スイッチの回路基板で短絡が発生し、その結果、電源線と電動ミラー側の電気配線間が電気的につながったこと、及び電動ミラー側の電気配線の被覆が破れて露出した部分が車体に接地し短絡状態になったことによる可能性があると考えられる。
電動ミラーの操作スイッチの回路内で電気的に遮断されている電源線と電動ミラー側の電気配線間が短絡して電気が流れたことについては、電気配線の摩耗や、経年劣化から回路基板上に汚れが付着したことにより、電源線と電動ミラー側の電気配線が電気的につながり、電気が流れる回路が回路基板上に形成されたものと考えられる。
戸閉め制御回路の電気配線の被覆が破れて素線が露出していたことについては、電線樋と電気配線が列車の振動で擦れることが原因となり、電気配線の被覆が損傷したものと考えられる。また、電動ミラー側の電気配線の被覆が破れて素線が露出していたことについては、電動ミラーを設置する改造工事を行う際の施工不良により、電気配線の被覆が損傷した可能性があると考えられる。
2 ○九州旅客鉄道株式会社
○車両障害(鉄道事故等報告規則第4条第1項第8号の「車両の走行装置、ブレーキ装置、電気装置、連結装置、運転保安設備等に列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等が生じた事態」に係る鉄道重大インシデント)
○H24.11.26(月)17時01分ごろ
○福岡県糟屋郡須恵町
香椎線須恵駅~須恵中央駅間(単線)
  西戸崎駅起点21k800m付近 
九州旅客鉄道株式会社の香椎線西戸崎駅発宇美(うみ)駅行き2両編成の下り気第765D列車(ワンマン運転)は、平成24年11月26日、須恵駅を定刻(17時00分)に出発した。運転士は、同列車を速度約40km/hまで加速させた後の惰行運転中、戸閉め表示灯の滅灯を認めたため、直ちに非常ブレーキをかけて停止した。
車内を確認したところ、前部車両の前寄り右側の旅客用乗降口の扉が約30㎝開いていた。運転士は、同旅客用乗降口の扉を含めた全ての扉を鎖錠した後、運転を再開した。同列車は須恵中央駅まで運転された後運行を取りやめた。
同列車には、乗客約150名及び乗務員1名が乗車していたが、転落等による負傷者はいなかった。
本重大インシデントは、戸閉め機械の二又と接手ねじが、掛かり代がほとんどない状態で締結されたことによって、二又と接手ねじの軸力が低下した後、二又と接手ねじが分離に至ったため、走行中にドアが開いたことにより発生したものと推定される。
軸力が低下したことについては、掛かり代がほとんどない状態で二又と接手ねじが締結されたことにより、締結部分のねじ山に加わるせん断応力が著大となったことにより、一部のねじ山に塑性変形が生じたことによって非回転ゆるみが発生したこと、及びドアの開閉や走行中の振動などの外力によって回転ゆるみが発生したことによるものであると考えられる。
上述した緩みによって軸力が低下した状態において、ピストン棒の回転、及び本重大インシデント発生前の運行中に、力行から惰行運転に移行した際の加速度の変化による慣性力によって、接手ねじと二又の分離に至ったものと考えられる。
掛かり代が不足していたことについては、折損対策で図面変更したことにより掛かり代に影響を与える可能性があり、取り付け時に注意を要することについて、同社及び図面変更を提案した戸閉め機械メーカーにおいて十分な検討がなされなかったため、作業者に作業を行う上で必要な情報が周知されなかったことによるものであると考えられる。