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運輸安全委員会事故調査報告書【H28年9月29日公表】

投稿日時:2016-09-29 00:00:02 (1232ヒット)

【鉄道事故:1件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○南阿蘇鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H27.11.29(木)17時32分ごろ
○熊本県阿蘇郡南阿蘇村
○高森線 中松駅構内
高森線立野駅発高森駅行き2両編成の下り普通列車は、南阿蘇水の生まれる里白水高原駅を定刻(17時29分)に出発した。
列車の運転士は、中松駅下り場内信号機の警戒信号を確認し、速度約20km/hで同駅構内の11号分岐器付近を走行中、異音を感じたためブレーキを使用したところ、更に大きな異音と揺れを感じて、列車は停止した。
停止後に確認したところ、1両目の前台車全2軸が右に脱線し、1両目の後台車全2軸及び2両目の全軸は本来の進行方向である下り本線とは異なる分岐線側の上り本線に進入していた。
列車には、乗客11名、運転士1名及び車掌1名が乗車していたが、死傷者はいなかった。
本事故は、列車が場内信号機の警戒信号の現示に従い、分岐器の直線側に対向で進入した際、1両目の前台車第1軸の右車輪フランジが右基本レールと右トングレールの間に入り込み、1両目の前台車第1軸が左右の車輪内面で分岐器左右のトングレールを抱き込む状態となった後、1両目の前台車第2軸以降が本来の進行方向とは異なる上り本線側に進入したため、1両目の前台車全軸が右側に脱線し、1両目の後台車及び2両目の全台車が本来の進行方向とは異なる上り本線側に進入したことにより発生したと考えられる。
1両目の前台車第1軸の右車輪フランジが右基本レールと右トングレールの間に入り込んだことについては、分岐器の右トングレールが定位側に接着しておらず、転換不良となっていた可能性があると考えられる。
分岐器が転換不良となっていたことについては、分岐器ポイント部の床板への塗油の不足等により、トングレールと床板間の摩擦係数が増加したことで、発条転てつ機の転換力を超える転換負荷が発生したことによる可能性があると考えられる。
また、分岐器が転換不良となっていたにもかかわらず、場内信号機に停止信号が現示されずに警戒信号が現示されていたことについては、分岐器の転換不良を検知する回路制御器のマイクロスイッチの接点が切り換わらず、導通している状態となり、トングレールの接着不良を検知できなかったことによるものと推定される。
再発防止策 回路制御器が、定位側の接着不良を検知できない状態であったにもかかわらず、場内信号機には停止信号が現示されずに警戒信号が現示されていたと推定される。このような状態は、脱線の可能性がある危険な状態となるおそれがあることから、同社は、起こり得る危険を認識し、
(1) 回路制御器の保守や経年管理を確実に行うこと、
(2) 故障した場合においても、安全性を損なうおそれがないよう信頼性を高めること
など、脱線の危険を最小限に抑える取組を行うことが必要である。
また、分岐器の転換不良を防止するために、転てつ機の耐用寿命等を考慮しつつ、分岐器ポイント部の床板への塗油を降雨の状況等も考慮し頻度を高めて行うことが望ましい。

参考資料 (南阿蘇鉄道・高森線)