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運輸安全委員会事故調査報告書【H29年12月21日公表】

投稿日時:2017-12-21 00:00:04 (1218ヒット)

【鉄道事故:2件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○西濃鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H28.10.6(木)8時13分ごろ
○岐阜県大垣市
 市橋線 乙女坂駅~美濃赤坂駅間(単線)
美濃赤坂駅起点1k027m付近
乙女坂駅発美濃赤坂駅行き、ディーゼル機関車1両、貨車24両の25両編成の上り1022列車の運転士は、乙女坂駅を8時8分に発車し、美濃赤坂駅の手前で速度が通常時より減速するのを感じたので後方を確認したところ、貨車が斜めになっていたため、直ちに非常ブレーキを使用して列車を停止させた。
運転士が列車を確認したところ、貨車が脱線していたので、美濃赤坂駅長等の関係者へ連絡した。美濃赤坂駅長が現場の状況を確認したところ、11両目の貨車の後台車全2軸及び12両目の貨車の全4軸が左に脱線していた。
ディーゼル機関車には、運転士1名、駅係員1名及び構内誘導係2名が乗車していたが、死傷者はいなかった。
本事故は、列車が半径201mの右曲線を通過中に、12両目の貨車の前台車前軸の右車輪が軌間内に脱線し、軌間を広げながら走行した後、同軸左車輪が左レールに乗り上がって脱線し、その後、11両目の貨車の後台車前後軸、12両目の貨車の前台車後軸及び後台車前後軸が脱線したものと考えられる。
12両目の貨車の前台車前軸の右車輪が軌間内に脱線したことについては、軌間変位が大きかったことに加え、連続したまくらぎの劣化や犬くぎの浮き上がり等によりレールの支持力が低下し、列車の走行により軌間変位が拡大したため、同軸の右車輪が内軌(右レール)を外れて落下したことにより発生した可能性があると考えられる。
軌間変位が大きかったこと及び列車の走行により軌間変位が拡大したことについては、軌間変位に関する整備を実施する明確な管理基準がなかったことや、レールフロー、まくらぎ及び犬くぎ等の保守状態の把握と、それに応じた整備が十分に行われていなかったことが関与したものと考えられる。
再発防止策 1 軌間変位の適切な管理について
同社においては、軌間変位が整備基準値を超えた場合の軌道整備の実施時期を軌道関係実施基準に定めておらず、同社の慣例で+16mmを超えた場合に行うこととされていた。また、検査において測定された軌間データは実際の軌間よりフロー分(脱線開始地点付近では約8mm)小さくなっていたと考えられ、実際の軌間変位は測定値より大きく、軌間内脱線に対する余裕は小さくなっていたと考えられる。
よって、同社においては、軌間変位の管理を適切に行うため、軌道関係実施基準の整備基準値及び整備基準値を超えた場合の軌道整備の実施方法を見直すとともに、その測定方法及びフローの管理について見直しを図る必要がある。
また、軌間内脱線に対する余裕を増加させるため、軌道の改良等に併せて、スラックの設計値を現在の25mmから縮小することが望ましい。
2 軌道部材等の適切な管理について
脱線開始地点付近において、まくらぎの劣化による犬くぎの外れや、軌間変位を防止するチョックの損傷などが見られ、まくらぎやレール締結装置の保守状態の把握と、それに応じた整備が十分にできていなかったと考えられる。
よって、同社においては、まくらぎやレール締結装置の管理を確実に行うとともに、曲線部のレール締結装置の強化や軌間変位防止器具などを使用した軌間拡大の防止を図る必要がある。
なお、軌道部材等の劣化が連続的に又はスラックの大きい急曲線で発生している場合は、軌間内脱線に対する危険性が特に増加するため、優先して整備を行うよう配慮する必要がある。
さらに、軌間を保持するために、まくらぎについては、木製よりも耐久性、保守の容易性が優れているコンクリート製等に置き換え(数本に1本程度の割合で置き換える部分交換も含む。)ていくことが望ましい。

参考資料1(西濃鉄道・市橋線)

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
2 ○北海道旅客鉄道株式会社
○踏切障害事故
○H29.6.20(火)16時27分ごろ
○北海道留萌市
○留萌線 大和田駅~藤山駅間(単線)
神社道路踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
深川駅起点40k450m付近
留萌駅発深川駅行きの上り普通第4932D列車の運転士は、大和田駅~藤山駅間を走行中、神社道路踏切道(第4種踏切道)に進入してくる自動車を認め、直ちに非常ブレーキを使用したが、列車は同自動車と衝突した。
この事故により、同自動車の運転者が死亡した。
本事故は、踏切遮断機及び踏切警報機が設けられていない第4種踏切道である神社道路踏切道に列車が接近している状況において、自動車が同踏切道内に進入したため、列車と衝突したことにより発生したものと推定される。
列車が接近している状況において、同自動車が同踏切道内に進入したことについては、自動車運転者が自動車に乗車した状態では接近する列車が見づらかったことが関与した可能性があると考えられるが、同自動車の運転者が死亡していることから詳細を明らかにすることはできなかった。
再発防止策 同社は、本事故が発生する以前から、踏切ミラーやストップサインの設置など、第4種踏切道に対する事故防止対策を様々検討し、平成29年4月から専任の体制を構築して推進している。これらの取組を継続して進めることで、安全性向上を図ることが望ましい。
また、本件踏切については、過去にも同踏切道を通行する自動車の運転者が死亡する踏切障害事故が発生していることを踏まえれば、早期に地元関係者や同社等の関係者間で協議を再開させ、廃止等を検討し、実施していくことが望ましい。なお、上記措置が完了するまでの間、通年で自動車の通行を禁止することも安全性を向上させる一方策となると考えられる。
第4種踏切道における自動車の事故の防止のために望まれる事項 踏切遮断機及び踏切警報機が設けられていない第4種踏切道は、廃止又は‘踏切道として存置する場合は踏切保安設備を整備する’べきものである。
当委員会では、鉄道事故のうち、事故発生リスクが高い第3種踏切道及び第4種踏切道における死亡事故について、平成26年4月から調査対象に追加して調査分析を行っており、平成29年9月末までに25件の事故調査報告書を公表している。
第4種踏切道における死亡事故の発生件数は、平成29年9月末までに報告書を公表した事故に本事故を加えると22件であり、踏切通行者の内訳は、自動車(軽自動車及び小型特殊自動車を含む)が11件、原動機付自転車が3件、自転車が2件、歩行者が6件となっており、自動車の事故が最も多く半数を占めている。自動車の事故が発生した踏切道の環境は一様ではないが、自動車の場合、運転席の位置から列車の接近を確認することとなるため、歩行者等と比較して、列車を確認しづらい特性があると考えられる。
このため、自動車通行者を安全にう回できる近隣の立体交差道路や第1種踏切道に誘導することにより、交通環境の一層の安全性向上を図る観点から、第4種踏切道の廃止又は‘踏切道として存置する場合は踏切保安設備を整備する’までの間、自動車の通行止め等の交通規制をより積極的に講じることが事故防止に対して効果的であると考えられ、鉄軌道事業及び道路管理並びに交通規制に関わる各関係行政機関は、この推進を図ることが望ましい。
なお、過去の事故調査において、踏切道に設けられた複数の交通規制標識間で規制内容に整合が取れていない例や関係者間で交通規制に関する認識について齟齬が生じている例が認められた。このため、交通規制の内容が踏切通行者に適切に伝わるよう、設備実態を把握し、必要な場合には是正を図ることにも留意することが望まれる。

参考資料2(JR北海道・留萌線)