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運輸安全委員会事故調査報告書【H25年10月25日公表】

投稿日時:2013-10-25 00:00:54 (1313ヒット)

【鉄道重大インシデント:1件】

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 インシデント概要 原因
1 ○三岐(さんぎ)鉄道株式会社
○車両脱線(鉄道事故等報告規則第4条第1項第6号イの「本線において車両が脱線したもの」に係る鉄道重大インシデント)
○H24.6.27(水)15:03ごろ
○三重県いなべ市
○三岐線東藤原駅構内
三岐鉄道株式会社の18両の入換編成(電気機関車2両と貨車16両)は、平成24年6月27日15時00分ごろ、セメント工場専用線から東藤原駅構内の下り本線へ向けて出発した。
入換編成の運転士は、東藤原13号イ分岐器を通過中に異常を感知したため、直ちに非常ブレーキを使用して入換編成を停止させたところ、2両目機関車の前台車第1軸が右へ脱線していた。
2両目機関車には運転士1名が乗務しており、また、1両目機関車に誘導係2名及び3両目貨車に操車係1名が乗車していたが、負傷はなかった。
本重大インシデントは、18両の入換編成(電気機関車2両と貨車16両)が4つの曲線が連続する区間にある内方分岐器の基準線側を走行した際、脱線係数が増加するとともに、限界脱線係数が低下したため、2両目機関車の前台車第1軸右車輪が外軌に乗り上がって右に脱線したものと考えられる。
脱線係数が増加したことについては、曲線半径を急激に小さくする方向に通りが変化していたこと、軌道面が右前方に下がる向きに平面性変位が大きくなっていたこと及び車両の走行速度が低速であったためにカント超過の状態で走行したと考えられることから、横圧が増加するとともに輪重が減少したことによるものと考えられる。
また、上り勾配において力行運転を行うことによる電気機関車の軸重移動も関与した可能性があると考えられる。
限界脱線係数が低下したことについては、曲線半径を急激に小さくする方向に通りが変化していたことにより、車両の前台車第1軸のアタック角が大きくなったことによると考えられる。
通りが急激に変化していたことや平面性変位が大きくなっていたことについては、平面曲線の諸元が把握されていなかったこと及び分岐器の軌道変位検査が適切に行われていなかったことから、軌道整備基準値を超えた状態であることを認識できず、軌道の線形や変位が正しく管理されていなかったためと考えられる。
勧告 運輸安全委員会は、本重大インシデントの調査結果を踏まえ、輸送の安全を確保するため、三岐鉄道株式会社に対し、運輸安全委員会設置法第27条第1項の規定に基づき、以下のとおり勧告する。
同社は、曲線及び分岐器の区間において、保守管理上の設計値を把握し、「土木・施設実施基準」に則した軌道変位の検査を適切に実施することにより軌道の整備・維持を確実に行うこと。

※運輸安全委員会設置法第27条第1項(原因関係者への勧告)
委員会は、事故等調査を終えた場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、航空事故等、鉄道事故等若しくは船舶事故等の防止又は航空事故、鉄道事故若しくは船舶事故が発生した場合における被害の軽減のため講ずべき措置について原因関係者に勧告することができる。