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運輸安全委員会事故調査報告書【H26年7月25日公表】

投稿日時:2014-07-25 00:00:32 (1351ヒット)

【鉄道事故:2件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○北海道旅客鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H24.2.29(水)22時00分ごろ
○北海道二海郡八雲町
函館線 八雲駅構内
北海道旅客鉄道株式会社の長万部駅発森駅行き1両編成(ワンマン運転)の上り普気第890D列車は、平成24年2月29日、八雲駅で、遅れていた特急列車の通過を待ち、その後、定刻(21時56分)より約2分30秒遅れて同駅4番線を出発した。
出発後、運転士は、分岐器付近で横揺れを感じたため、非常ブレーキを使用して列車を停車させた。その後、確認したところ、列車は、4番線から上り本線への進路上にある10号ロ分岐器通過後、前台車の全2軸が分岐線側線路の右側へ脱線していた。
列車には乗客2名及び運転士1名が乗車していたが、死傷者はいなかった。
本事故は、列車が分岐器を分岐線側に走行する際、リードレール部においてフランジウェー部分のレール頭頂面付近までに形成された堅く凍った氷雪があったため、前台車の車輪が右リードレールに乗り上げて脱線したものと考えられる。
フランジウェー部分に堅く凍った氷雪があったことについては、除雪が十分に行われていなかったことによるものと考えられる。
除雪が十分に行われていなかったことについては、八雲駅の教育資料には分岐器のフランジウェー部分の除氷雪に関する記述が欠落していたことから、冬期契約社員がフランジウェー部分の除氷雪の重要性を十分には認識していなかった可能性が考えられること、並びに北海道旅客鉄道株式会社として除雪に関する報告及び冬期契約社員の除雪状況の把握方法を定めていなかったことから、駅での除雪状況の把握が十分ではなかったことが要因となった可能性があると考えられる。
2 ○日本貨物鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H24.4.26(木) 5時36分ごろ
○北海道上磯郡木古内町
江差線 泉沢駅~釜谷駅間
五稜郭駅 起点 29k027m付近
日本貨物鉄道株式会社の広島貨物ターミナル駅発札幌貨物ターミナル駅行き20両編成の高速貨第3061列車は、平成24年4月26日、青森信号場を定刻(3時 52分)に出発し、五稜郭駅に6時13分に到着した。
五稜郭駅で列車の到着を待っていた輸送係は、到着した列車の18両目の貨車から発煙しているのを認め、駅務室に連絡した。駆けつけた駅務社員により、台車周辺から発煙していた貨車の消火作業が行われた。
一方、同日の5時59分に、江差線の釜谷駅構内で分岐器の転換不良が発生したため、北海道旅客鉄道株式会社の保線社員が同駅構内を確認したところ、周辺のまくらぎに脱線の痕跡があり、分岐器も破損していた。
五稜郭駅で発煙していた貨車は脱線した状態ではなかったが、車両を点検した結果、車輪等の状況から同貨車が一旦脱線したものと判断された。
本事故は、貨車にコンテナを積載した状態において、左右の車輪間で大きな静止輪重アンバランスが生じていたため、半径300mの曲線を走行中に、静止輪重アンバランスが生じていない車両と比較して、外軌側車輪の輪重が小さくなり、かつ、内軌側車輪の輪重が大きくなった影響によって外軌側車輪の横圧が増加したことにより、外軌側車輪の脱線係数が増大して外軌側車輪がレールに乗り上がり脱線したものと考えられる。
 脱線した貨車に大きな静止輪重アンバランスが生じていたことについては、コンテナ内の積荷の偏積によるものと推定される。
 なお、貨物列車が運行する区間において管理することとされている複合変位が、整備すべき対象には該当していなかったが、車輪のレール乗り上がり開始箇所の手前で比較的大きくなっていたことは、外軌側車輪の輪重減少を助長させた可能性があると考えられる。

参考資料1(JR北海道 函館線)

参考資料2(JR北海道 江差線)

【鉄道重大インシデント:1件】

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○北海道旅客鉄道株式会社
○車両障害(鉄道事故等報告規則第4条第1項第8号の「車両の走行装置、ブレーキ装置、電気装置、連結装置、運転保安設備等に列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等が生じた事態」に係る鉄道重大インシデント)
○H25.1.7(月)23時03分ごろ
○北海道十勝郡浦幌町
○根室線 常豊信号場~上厚内駅間
滝川駅起点 241k362m付近
北海道旅客鉄道株式会社の札幌駅発釧路駅行き5両編成の下り特急気第4013D列車(スーパーおおぞら13号)は、平成25年1月7日、常豊信号場を定刻(22時54分)より7分遅れて通過した。列車の運転士は、速度約    90km/hで運転中、戸閉め表示灯の消灯を認めたため、直ちに非常ブレーキを使用して列車を停止させた。停止後、車掌が5両目のドアを確認したところ、前寄り右側のドアが約30cm開いていたため、鎖錠して見張り員を配置し、運転を再開した。
同列車には、乗客37名及び乗務員2名が乗車していたが、転落等による負傷者はいなかった。
本重大インシデントは、5両目の車両前より右側(4位)のドアの戸閉め配管内に溜まっていたドレンが、外気温の低下によって氷結して戸閉め配管を閉塞させ、同ドアの開閉装置に圧縮空気が供給されなくなったことにより、同ドアを閉保持することができなくなったため、厚内トンネル内を走行中に受けた負圧及び車両の動揺などによって、同ドアが開いた可能性が考えられる。
戸閉め配管内にドレンが溜まったことについては、5両目の車両の圧縮空気の経路において、除湿バイパスコックが開いていたことにより、除湿されていない圧縮空気が流入し、圧縮空気に含まれていた水分(水蒸気)が凝縮したことによるものと推定される。 
また、本来、「閉」位置で緊縛固定されているはずの除湿バイパスコックが開いていたことについては、北海道旅客鉄道株式会社の車両保守関連部署への指示伝達及び車両転属配置時の引き継ぎが不十分かつ不適切であったため、除湿バイパスコックを「閉」位置で緊縛固定することが、車両の定期検査の実施工場及び車両転配先などに周知されていなかった状況において、何らかの理由により誤って除湿バイパスコックが開いたままとなった可能性があると考えられる。

参考資料3(JR北海道 根室線)