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運輸安全委員会事故調査報告書【H29年3月30日公表】

投稿日時:2017-03-30 00:00:23 (1132ヒット)

【鉄道事故:2件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○長崎電気軌道株式会社
○車両脱線事故
○H28.6.2日(木)22時50分ごろ
○長崎県長崎市
○桜町支線 諏訪神社前停留場~公会堂前停留場間(複線)
長崎駅前停留場起点0k923m付近
蛍茶屋停留場発赤迫停留場行き1両編成の第362号車は、諏訪神社前停留場を定刻(22時47分30秒)に出発した。運転士は、長崎駅前停留場方に向けて公会堂前交差点の分岐器を右曲線となる分岐線側に通過中、異音とともに車両が浮き上がるような異状を感じ、ブレーキ操作により車両を停止させた。運転士が降車して確認したところ、車両は、後台車の全2軸がレールの左に脱線していた。
車両には乗客1名、運転士1名が乗車していたが、死傷者はいなかった。また、事故現場は道路(併用軌道箇所)の交差点内であったが、脱線した車両は、脱線前及び脱線後において自動車等と接触や衝突はしなかった。
本事故は、交差点において電車が、右曲線となる分岐器内を後台車第1軸の右車輪背面と、ダイヤモンドクロッシング内のガードレールの機能を持つ部位の側面とを接触させながら走行していた際に、同車輪背面がノーズレール先端付近に乗り上がって脱線を開始し、車輪フランジが同部位の側面上部を走行した後、同軸左車輪が左レールに乗り上がって同軸が左に脱線し、続いて後台車第2軸も左に脱線したことにより発生したものと考えられる。
後台車第1軸の右車輪が乗り上がって脱線したことについては、変形したノーズレール先端部に車輪が急激に接触し、同車輪の背面横圧が増加するとともに、変形により車輪背面とノーズレール先端部の接触角が減少していたことの影響によるものと考えられる。
ノーズレール先端部が変形したことについては、車輪がノーズレール先端部に接触する構造となる曲線半径の非常に小さい曲線に存在するダイヤモンドクロッシング内で、設計変更によりノーズレール先端部の高さを低くした影響により、ノーズレール先端部が変形しやすい状態となったところに、複数の電車の各台車前軸右車輪の背面が繰り返し衝撃することにより発生したものと考えられる。
再発防止策 本事故と同種の脱線事故を防止するためには、ノーズレールについて、車輪のフランジ背面のノーズレール先端部への接触量及び接触する場合においても変形する量をできるだけ少ない構造にすることが必要であると考えられる。なお、分岐器等の重要な部分の設計変更を行う際には、安定して長期間使用することを考慮し、詳細な検討を行い実施することが望ましい。
また、本事故発生箇所では、平成19年から本事故を含め計4回の脱線事故が発生している。脱線原因の詳細はそれぞれ異なっているが、本事故発生箇所が半径20mと非常に小さい曲線半径を持つ分岐器内であることが、事故の発生の背景にあると考えられる。これは、軌道法で許されている半径の範囲内ではあるが、当該箇所における脱線事故の抜本的な再発防止を図るために、曲線半径がより大きくなるように線形改良を行うことを検討することが望ましい。

参考資料1 (長崎電気軌道・桜町支線)

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
2 ○西日本旅客鉄道株式会社
○踏切障害事故
○H28.10.8(土)9時30分ごろ
○山口県山口市
○山陽線 四辻駅~新山口駅間(複線)
中田第1踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
神戸駅起点457k907m付近
岩国駅発下関駅行きの下り普通第3313M列車の運転士は、四辻駅~新山口駅間を走行中、中田第1踏切道(第4種踏切道)に進入してきた軽トラックを認め、直ちに非常ブレーキを使用したが、列車は同軽トラックと衝突した。
この事故により、軽トラックの運転者1名が死亡した。
本事故は、第4種踏切道である中田第1踏切道に列車が接近している状況において、軽トラックが同踏切道内へ進入したため、列車と衝突したことにより発生したものと推定される。 列車が接近している状況において、軽トラックが同踏切道内に進入した理由については、列車の接近に気付かずに踏切道内へ進入した可能性が考えられるが、軽トラック運転者が死亡していることから、詳細を明らかにすることはできなかった。
再発防止策 本件踏切は第4種踏切道であるが、複線の山陽線内にあり、鉄道交通量が多くて列車の踏切通過速度が95km/hという高い速度であることから、列車の接近中に踏切通行者が誤って踏切道内へ進入しないように、本事故を踏まえ、本件踏切のような踏切保安設備を有しない第4種踏切道について統廃合や踏切保安設備の設置を関係者で協議するなど、安全性を向上することが望ましい。

参考資料2 (JR西日本・山陽線)