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運輸安全委員会事故調査報告書【H28年7月28日公表】

投稿日時:2016-07-28 00:00:58 (1250ヒット)

【鉄道事故:2件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○九州旅客鉄道株式会社
○踏切障害事故
○H27.11.14(土)13時31分ごろ
○宮崎県宮崎市
○日南線 南方駅~木花駅間(単線)
中田踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
九州旅客鉄道株式会社の宮崎駅発油津駅行きの下り気第1939D列車の運転士は、平成27年11月14日(土)、日南線南方駅~木花駅間を走行中、中田踏切道(第4種踏切道)にて軽貨物自動車を認め、非常ブレーキを使用したが、列車は同自動車と衝突した。
 この事故により、同自動車の運転者及び同乗者が死亡した。
本事故は、列車が第4種踏切道である中田踏切道に接近している状況において、軽貨物自動車が同踏切道に進入したため、列車と衝突したことにより発生したものと考えられる。
列車接近中の同踏切道内に同自動車が進入した理由については、同自動車の運転者が死亡していることから詳細を明らかにすることはできなかった。

参考資料1(JR九州・日南線)

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
2 ○長野電鉄株式会社
○踏切障害事故
○H28.3.3(木)6時27分ごろ
○長野県長野市
○長野線 善光寺下駅~本郷駅間(複線)
五所久保踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし)
長野電鉄株式会社の長野線長野駅発信州中野駅行き3両編成の下り普通第507列車の運転士は、平成28年3月3日(木)、善光寺下駅~本郷駅間を走行中、五所久保踏切道(第4種踏切道)に進入しようとしている歩行者を発見し、直ちに非常ブレーキを使用したが、同列車は同歩行者と衝突した。
この事故により、歩行者1名が死亡した。
本事故は、第4種踏切道である五所久保踏切道に、列車が接近している状況において、歩行者が進入したため、列車と衝突したことにより発生したものと考えられる。
列車の接近している状況において、歩行者が踏切道内に進入した理由については、歩行者が死亡していることから、詳細を明らかにすることはできなかった。

参考資料2(長野鉄道・長野線)

【鉄道重大インシデント:1件】

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 インシデント概要 原   因
○東日本旅客鉄道株式会社
○施設障害(鉄道事故等報告規則第4条第1項第7号の「鉄道線路、運転保安設備等に列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等が生じた事態」に係る鉄道重大インシデント)
○H27.4.12(日)6時10分ごろ
○東京都千代田区
○東北線(山手線) 神田駅~秋葉原駅間
東日本旅客鉄道株式会社の磯子駅発大宮駅行き10両編成の京浜東北線普電第522B列車の運転士は、平成27年4月12日、6時10分ごろ、神田駅~秋葉原駅間を運転中、隣接する東北線(山手線内回りと外回り)の線路間に立っていた電柱が手前に倒れてくるのを認め、非常ブレーキを操作するとともに防護無線を発報して列車を停止させた。
このインシデントによる負傷者はいなかった。
本重大インシデントは、電路設備のインテグレート架線工事に伴う電柱の撤去工事の過程において、列車の運行の用に供している電柱が傾斜し、また、傾斜したとの情報が複数の関係者に伝わったが、必要な措置が講じられなかったため、傾斜が進み、列車が運行する時間帯に線路上に転倒し、建築限界を大きく支障したことにより、発生したものと考えられる。
同電柱が傾斜し、転倒に至ったことについては、同電柱が設置されていた重力形ブロック基礎は、電柱、梁及び架線等の質量による鉛直力により、同基礎の許容できる転倒モーメントが増減される構造であったことから、平成23年7月に、通常より高い位置(1.9m)で同電柱に取り付けられた支線の引張力により、水平方向の作用力による転倒モーメントが増加したことによって、同基礎の転倒に対する安全率が低下していたものと考えられる。
さらに、この状況において、同電柱の上部に取り付けられていた梁及び架線等が平成27年3月に撤去されたため、同基礎に作用する鉛直力が小さくなり、同支線の作用力による転倒モーメントは変化しなかったが、転倒に対する安全率が更に低下し、1以下になったものと考えられる。
このような事態を招いたことに対しては、同社において、本件6号電柱の基礎の構造を把握していない状態で、神田駅~秋葉原駅間において半数以上で使用しているアンカボルト基礎のようなより強固な構造だと思い込んで、安全率が十分であると誤って判断していたことが関与したと考えられる。
同電柱が傾斜したとの情報が複数の関係者に伝わったが、必要な措置が講じられなかったことについては、
(1) 同工事において、過去に同電柱が傾斜するなどの同様な経験がなかったことから、事態を危険側に判断することができなかったため、電柱の傾斜に気付いた時点で、早急な仮処置を行わなかったこと、
また、異常時における連絡体制が整備されていたが、電力指令等の必要な関係各所への連絡が迅速に行われなかったこと、
(2) 東京総合指令室内で、現場となる運輸区からは「運転に支障なし」の報告であったことから、誰もが緊急を要する異常であるとの認識に至らなかったこと、
また、同指令室内の情報伝達は、運用指令の詳細な情報がそろってから施設指令へ報告するという慣例的な処理が、必要な関係部署への連絡の遅延につながったこと
が関与したものと考えられる。
再発防止策 本重大インシデントは、インテ工事において、基礎構造が不明のまま電柱の安全性を検討したことにより、電柱の撤去工事の過程で、列車の運行の用に供している同電柱が傾斜し、また傾斜した情報が複数の関係者に伝わったが、必要な措置が講じられず、列車の運行する時間帯に線路上に転倒し、建築限界を大きく支障する事態に至ったものである。
このような事態の再発を防止するため、同社は以下のような防止策を講じる必要があると考えられる。
(1) 3.3.2及び3.3.3に記述したように、地表面下の基礎構造が不明で、電柱下部に取り付ける支線の位置が地表面から高くなる場合、又は基礎に作用する鉛直力等の増減が想定される工事を行う場合は、基礎の構造を確実に把握した上で、電気設備実施基準において規定している安全率を確保すること。
(2) 3.4.2に記述したように、工程会議においては、本件6号電柱の支線の取付高さは標準的な工法によらない施工であるという認識を共有できなかったものと考えられる。よって、工程会議は、定型的な会議で終わらせることなく、上記のような施工上の注意点などの情報を共有し、必要に応じ技術的な検討の場を別に設けるなど、鉄道施設に対する施工の安全性を確保する仕組みとすること。
(3) 3.5.1に記述したように、過去に電柱の傾斜や転倒などの経験がなくとも、どの程度傾斜すれば危険であるか判断するための基準を整備すること。
また、監督社員等の施設担当者が、施設に異常な事態又は疑わしい事態が発生したと感じた場合には、指令など関係部署に必要な情報が確実に伝わるようにすること。
(4) 3.5.3に記述したように、本件6号電柱の傾斜は、建築限界の近傍にある設備の異常事象であったことを考えると、東京総合指令室においては、一斉伝達等により、同指令室内で情報を共有するとともに、状況を的確に判断し、異常事象に迅速に対応すること。
また、現地での安全確認に際しては、建築限界近傍の構造物に異常又は疑わしい事態等を感じた場合は、運行している列車を停止させるための手配を優先すること。

参考資料3(JR東日本・山手線)