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運輸安全委員会事故調査報告書【H23年10月28日公表】

投稿日時:2011-10-28 00:00:56 (1108ヒット)

鉄道事故

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 重大インシデント概要 原因
1 ○大阪市交通局
○閉そく違反
○H22.3.15(月)5:46ごろ
○大阪府門真市
7号線(長堀鶴見緑地線)
門真南駅構内
大阪市交通局の7号線大正駅発門真南駅行き4両編成の下りB0504列車は、平成22年3月15日(月)、京橋駅を定刻(5時27分)に出発した。同列車は、同駅を出発直後、ATC常用ブレーキが作動して約17m進行して停止した。
同列車は、運転指令の指示でATCを解除して運転を再開したが、閉そく方式の変更がなされないまま運転を続け、門真南駅に進入した際に、同駅2番線に同列車の振替列車として停車していたA0504列車への進路に進入したため、運転士が非常ブレーキを使用し、A0504列車の約60m手前で停止した。
本重大インシデントは、ATCに故障が発生し、常用閉そく方式が施行できない列車に対して、代用閉そく方式が施行されずに運転が継続される状況下で、門真南駅の閉そくを確認しないまま本件列車を同駅に進入させたこと及びATCが解除され、かつ、正常な信号が現示されない異常時の運転であるにもかかわらず、同駅に進入する際に運転士によってポイントの開通方向の確認が行われなかったため、本件列車が、振替列車が停止していた進路に進入したことにより発生したものと考えられる。
※所見あり
2 ○西日本旅客鉄道株式会社
○車両障害
○H22.10.29(金)23:11ごろ
○広島県広島市
芸備線
矢賀駅~戸坂駅間(単線)
備中神代駅起点152k400m付近
西日本旅客鉄道株式会社の芸備線広島駅発下深川駅行き2両編成の上り気第3874D列車は、平成22年10月29日(金)、矢賀駅を定刻(23時07分)に出発した。列車の運転士は、速度約70㎞/hで走行中、次の戸坂駅到着のためのブレーキをかけたところ、戸閉め表示灯の滅灯を認めたため、直ちに非常ブレーキをかけて停止した。
車内を確認したところ、前部車両の進行前寄り左側(前後左右は列車進行方向を基準とする。)の旅客用乗降口の扉が約5cm開いていた。
同列車には、乗客約130名及び乗務員3名が乗車していたが、旅客用乗降口の扉が開いたことによる乗客の転落はなかった。
本重大インシデントは、本件ドアの戸閉め機械のピストン棒の接手ねじが破断したことにより、ドアを閉める力が作用しなくなったため、本件列車の走行中に本件ドアが開いたことにより発生したものと推定される。
接手ねじの破断は、破断面の状況から疲労破壊によるものと考えられるが、ドアが閉まったときや閉まる際に、想定されていなかった曲げの力が繰り返し接手ねじに作用したため、接手ねじが強度不足となっていたことによるものと考えられる。
また、接手ねじの材料に、図面指定と異なり、強さや靱性を必要とされない場合に用いられる硫黄快削鋼を使用していたことが関与した可能性もあると考えられる。

大阪市交通局閉そく違反鉄道重大インシデントにおける所見

本重大インシデントにおいては、異常時に行うべき措置や取扱いなどに適切でない事象が多々見受けられたことから、当該線区の運転に関係する係員が異常時に十分な対応ができていなかったものと考えられる。また、同局においても異常時に対応するための安全管理体制が十分にとられていなかった可能性があると考えられる。
このため、同局は、同種の重大インシデントの再発防止に当たって、運転に関係する係員一人一人が異常時に適切な対応ができるよう教育訓練を充実・徹底させるなど、異常時の安全管理体制の改善を図るべきである。
また、その際には、ATO、ATC、PTCなど、列車の運転や運行に関係するシステムについて仕組みを熟慮した上で、その仕組みに合った異常時の対応を検討する必要がある。

※所見とは…
『法律の規定はなく、原因関係者等がとるべき措置や一般的な努力目標等について述べるものであり、措置義務はない。』