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運輸安全委員会事故調査報告書【H29年5月25日公表】

投稿日時:2017-05-25 00:00:38 (1331ヒット)

【重大インシデント:1件】

番号 事業者、インシデント種類、発生日時・場所 インシデント概要 原   因
○京成電鉄株式会社
○工事違反(鉄道事故等報告規則第4条第1項第5号の「列車の運転を停止して行うべき工事又は保守の作業中に、列車が当該作業をしている区間を走行した事態」に係る鉄道重大インシデント)
○H28.7.27(水)0時55分ごろ
○千葉県佐倉市
 本線 京成臼井駅~京成佐倉駅間(複線)
京成上野駅起点46k062m付近
京成電鉄株式会社の車掌区宗吾支所の助役は、平成28年7月27日0時51分ごろ、線路閉鎖工事の責任者から、京成臼井駅~宗吾参道駅間の下り線で行われる工事について着手承認の要請を受けたため、宗吾参道駅の下り線を最後に出発する京成成田駅行きの最終列車である第2345列車が宗吾参道駅を出発したことを確認し、同工事の着手を承認した。
一方、京成佐倉駅行きの最終列車である第2373K列車は、定刻より約1分遅れて(0時55分ごろ)京成臼井駅を出発し、工事着手の承認後の線路閉鎖区間に進入した。  
本重大インシデントは、列車の運転を停止して行うべき工事の作業において、京成佐倉駅行きの最終列車である第2373K列車の京成佐倉駅への到着が確認されないまま、線路閉鎖工事の着手が承認されたため、着手承認後の線路閉鎖区間に第2373K列車が進入したことにより発生したものと推定される。
第2373K列車の京成佐倉駅への到着が確認されないまま、線路閉鎖工事の着手が承認されたことについては、第2345列車が宗吾参道駅を出発することの確認をもって、線路閉鎖区間に列車等がないことを確認したという状態であり、線路閉鎖は、関係する駅長等が相互に打ち合わせて行われるという基準が遵守されていない常態となっていたことが関与したと考えられる。
なお、第2373K列車が線路閉鎖区間に進入したことについては、同社が、着手承認の際に、線路閉鎖区間に列車等がないことを確認することのみをもって、その区間に列車等を進入させない措置としていたことが背景にあった可能性があると考えられる。
再発防止策 本重大インシデントは、工事責任者が近接した踏切道の踏切警報機の鳴動に気付き、作業員を退避させたが、鉄道人身障害事故を引き起こしかねない重大な事態であったものと考えられる。このような事態の再発を防止するために、同社は以下のような対策を講じる必要があると考えられる。
(1) 3.3に記述したように、線路閉鎖工事の着手承認の際に、関係する駅長等が相互に打ち合わせて行うという基準が遵守されず、線路閉鎖区間の終端側の駅を出発する列車だけを確認すればよいと認識し、これが慣例となっていたことから、規程を遵守するよう教育するとともに、これが形骸化しないように、現場の実態をよく把握し、必要により手順等を見直すこと。
(2) 3.4.1に記述したように、本件工事は、上り線の線路を支障する工事であったが、線路閉鎖の手続を行わない方法で工事を実施していた。この状況から、工事の実施に当たっては、作業内容を把握し、安全を最優先に考えて、線路閉鎖を行う工事とすべきか否かを決定すること。
(3) 3.4.2に記述したように、線路閉鎖工事の着手承認に当たっては、関係する信号機に停止信号を現示することにより、着手承認後の同区間への列車等を進入させないことをより確実なものとすることができることから、これを実施する仕組みを構築すること。さらに、線路閉鎖の取扱いの誤りを防止するため、線路閉鎖工事の着手の要請や承認、関係信号機への停止信号の現示等を連携したシステムを導入することが望まれる。
(4) 3.4.3に記述したように、線路閉鎖区間に列車等が進入した場合においては、緊急的に列車等を停止させる必要があることから、作業中における工事責任者の列車防護用信号器具等の確実な携帯と迅速な使用を再徹底させること。さらに、工事を施工している箇所の手前で列車等が停止できるよう、作業を行っている旨を知らせる表示等の設置が望まれる。
なお、同種事象が繰り返し発生していることに鑑み、同社のように列車等がないことの確認のみをもって、線路閉鎖の取扱いを行っている他の鉄道事業者においては、関係する信号機に停止信号を現示する方法等により、線路閉鎖区間に列車等を進入させないことの確実性を向上させることが望まれる。

参考資料1(京成電鉄)