一般社団法人 日本鉄道電気技術協会

お知らせ

TOP > お知らせ > 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年8月29日公表】

運輸安全委員会事故調査報告書【H26年8月29日公表】

投稿日時:2014-08-29 00:00:27 (1135ヒット)

【鉄道事故:2件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 事故概要 原   因
○東日本旅客鉄道株式会社
○列車火災事故
○H25.2.4(月)20時12分ごろ
○群馬県渋川市
上越線 津久田駅~岩本駅間(複線)
大宮駅起点 106k500m
東日本旅客鉄道株式会社の高崎駅発新津駅行き配8757列車は、無動力で回送するディーゼル機関車とそれを牽引する電気機関車からなる2両編成で、平成25年 2月4日、敷島駅を通過した。
通過後、運転士は、後方から引かれるような感じを受けたため、計器類を確認したが異常は見当たらなかったので、運転を継続した。その後、第二利根川橋梁を過ぎた辺りを速度約60km/hで力行運転中に、先ほどと同じように後方から引かれるような衝撃を感じたため、運転士は、再度、計器類を確認したところ異常はなかったが、後方を確認したところ2両目のディーゼル機関車から出火しているのを認めたので、安全な場所を探して非常ブレーキで列車を停止させた。
その後、ディーゼル機関車は、消火活動により鎮火したが、変速機等、車両の一部が焼損した。
列車には運転士1名が乗車していたが、負傷はなかった。
本事故は、ディーゼル機関車を無動力回送するために行う正逆転切換機構等の「中立ロック」が正確に行われていなかったため、無動力回送時にディーゼル機関車の 1速コンバーターに動力が伝わって空回りの状態となり、更に冷却水を抜いていたことから、コンバーターの冷却ができずにコンバーター内が高温となって損傷するとともに、高温となったコンバーターの破片等がコンバーター内部に残っていたトルコン油に引火したことにより火災が発生したものと考えられる。
「中立ロック」が正確に行われなかったことについては、作業員が作業方法を知らない状態で作業を行い、確認した作業員も「中立ロック」について正確に理解していなかったためと考えられる。
作業方法を知らない状態で作業を行い、作業内容を正確に理解していなかったことについては、無動力回送のような頻度の低い作業について、マニュアルの整備が不十分であり、教育訓練についても作業前に行われていなかったことや、不十分であったことから、同社の同作業に対する重要性の認識が低かったものと考えられる。
また、過速度検知のメータリレーがバッテリーからの電源供給が必要な新型に置き換えられていたため、無動力回送では電源が供給されず、許容速度を超えても非常ブレーキが動作しなかったことが、本事故の発生に関与したと考えられる。
2 ○九州旅客鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H26.2.13(木) 20時20分ごろ
○大分県日田(ひた)市
久大(きゅうだい)線 天ヶ瀬(あまがせ)駅~杉(すぎ)河内(かわち)駅間(単線)
久留米駅 起点 60k753m付近
九州旅客鉄道株式会社の日田駅発豊後森(ぶんごもり)駅行き1両編成の下り第1879D列車は、平成26年2月13日、上り列車の遅れにより天ヶ瀬駅を定刻より約10分遅れて出発した。
列車の運転士は、速度約70km/hで力行運転中、約50m先の線路上に倒木があるのを認め、直ちに非常ブレーキを使用したが、列車は、倒木と衝突し、約60m走行して停止した。
停止後、運転士が列車を確認したところ、列車は全軸が脱線し、右に傾いていた。
列車には乗客2名及び運転士1名が乗車しており、乗客1名が負傷した。
本事故は、線路を横断する状態で杉の木が倒れていたため、走行していた列車が乗り上げ、その際に右へ移動し、脱線したものと考えられる。 杉の木が倒れたのは、以下のことから、冠雪による根返りであると考えられる。
(1) 事故当日に降った湿り気の多い付着力の大きな雪による樹冠への積雪により、杉の木の重心位置が通常より高くなっていたこと。
(2) 倒れた杉が壮齢木で、樹高に対して幹も十分な太さであったことから、幹の強度は比較的大きかったが、それに比して根系の支持力が小さかったと考えられること。
なお、 少ない積雪でありながら倒木したことについては、倒木が発生した斜面が、谷状で付近の雨水等を集めやすい地形であり、また、斜面の上部にある温泉施設の排水設備が破損して漏れた水が斜面に流れ出していたことにより、立木の根元の斜面が水分を多く含んだ状態であったことによる可能性があると考えられる。

参考資料1(JR東日本 上越線)

参考資料2(JR九州 久大線)