運輸安全委員会事故調査報告書【H24年1月27日公表】
- 投稿日時:2012-01-27 00:00:43 (1219ヒット)
番号 | 事業者、事故種類、発生日時・場所 | 重大事故概要 | 原因 |
---|---|---|---|
1 |
○弘南鉄道(株) ○列車脱線事故 (踏切障害に伴うもの) ○H22.12.17(金)9:58ごろ ○青森県弘前市 大鰐線 石川プール前駅~石川駅間(単線) 石川家岸踏切道(第1種踏切道) 大鰐駅起点3k995m付近 |
弘南鉄道株式会社の大鰐線大鰐駅発中央弘前駅行き2両編成の下り第13列車は、平成22年12月17日(金)、石川プール前駅を定刻の9時56分に出発した。 列車の運転士は平川橋りょう上を40~45km/hの速度で惰行運転中、前方の石川家岸踏切道内に右側から進入しようとする軽乗用車を認めたため、直ちに汽笛を吹鳴するとともに非常ブレーキを使用したが間に合わず、列車は軽乗用車に衝突し同踏切道から約72m行き過ぎて停止した。 列車は先頭車両の前台車第1軸が右へ脱線した。 列車には乗客26名及び乗務員2名(運転士1名及び客室案内係1名)が乗車しており、このうち乗客1名及び客室案内係1名が負傷した。軽乗用車には運転者のみが乗車しており、運転者は負傷した。 負傷者3名 |
本事故は、本件踏切の踏切保安装置が正常に動作し、遮断かんが降下していたにもかかわらず、本件列車の通過直前に本件自動車が本件踏切に進入したため、本件運転士により非常ブレーキが使用されたものの、本件列車がこれと衝突して脱線したものと推定される。 | 2 |
○西日本旅客鉄道(株) ○鉄道人身障害事故 ○H22.12.17(金)21:44ごろ ○兵庫県神戸市 山陽線 舞子駅構内 |
西日本旅客鉄道株式会社の姫路駅発米原駅行き12両編成の上り快速電第842T列車は、平成22年12月17日(金)、舞子駅を定刻(21時44分)に出発した。 出発後、車掌は、前から5~6両目付近のプラットホーム上で白いものを振っている男性を認めたため、乗務員室にある緊急に列車を停止させるスイッチを操作し、列車は出発してから約76m走行して停車した。 このとき、線路に女性が転落しているのが発見され、その後、死亡が確認された。死亡した女性と一緒に降車しプラットホームにいた女性が、転落した女性を助けようとしたが、その際に足を負傷した。 列車には、乗客約600名、運転士1名及び車掌1名が乗車していたが、死傷者はいなかった。 死傷者2名(死亡1、負傷1) |
本事故は、同駅において、本件列車から降車した本件旅客が本件列車に沿うように神戸駅方に進み、4両目と5両目の間でホームから転落したあと、本件列車が出発し、上体を起こして立った姿勢であった本件旅客の頭部が、本件列車とホームの間に挟まれたことにより発生したものと推定される。 ※所見あり |
西日本旅客鉄道株式会社、山陽線、舞子駅構内、鉄道人身障害事故における所見
1 鉄道利用者の安全意識の向上と非常ボタンの周知
本事故は、列車から降車した旅客がホームから転落したために発生した事故であり、転落したことについては、飲酒が関与した可能性があると考えられる。このような事故を少しでも減少させていくためには、
(1) 線路に転落した場合の危険性について鉄道利用者一人一人が認識し、自らの行動により危険な状況に陥らないよう、自分の身の安全を守ることへの意識を高めること
(2) 非常ボタンが整備されているホームにおいて、線路に転落した旅客に気付き列車を停止させる必要性を感じた場合に、周囲の旅客がちゅうちょなく非常ボタンを押せるよう鉄道事業者は配慮し、鉄道利用者の理解と協力を得ること
が重要であると考えられる。このため鉄道事業者は、鉄道利用者への安全意識の啓発だけでなく、非常ボタンの設置目的や操作方法等の周知を行うことも重要であると考えられる。また、このような活動は一社単独の取組みだけでなく、鉄道事業者団体による一斉のキャンペーンや、鉄道事業者の枠を超えた啓発活動により、鉄道利用者のみならず社会全体へ一層の理解を広げていくことが望ましい。
2 列車の停車中及び駅進出時における非常ボタンの効果的な活用
本事故の発生と直接関係はないが、本事故の調査過程で、同駅に設置されている非常ボタンは、列車の停車中及び駅進出時に押された場合、押される場所によっては乗務員が気付くことが難しい可能性があることが明らかになった。
同社が設置した非常ボタンは、新大久保駅で発生した鉄道人身障害事故を契機として国土交通省鉄道局から発出された通達を受け、旅客等の転落を駅に進入する列車に知らせることを目的に設置されたものであり、必ずしも停車中及び駅を進出する列車までを含むものではなかったものと考えられる。また、非常ボタンに付随している回転灯及びブザーは、通達等による設置の義務付けはないが、同社では、非常ボタンが押された場所を特定することを主目的として設置したものと考えられる。
しかしながら、列車が駅に停車してから駅を進出するまでの間でも本件のような事故が発生する可能性はあり、その際、非常ボタンの操作により乗務員が異常に気付けば、非常ボタンの設置は更に効果的なものになると考えられる。
鉄道事業者は以前から、列車を止める必要がある場合にちゅうちょなく非常ボタンを押すよう鉄道利用者に協力を求めており、鉄道利用者も非常ボタンを押せば、停車中や動き始めた列車であっても異常の発生が乗務員に伝わり、列車は止まると期待しているものと考えられる。このため、非常ボタン設置駅で、ホームに駅係員がいない駅や長い編成の列車が停車する駅など状況に応じ、進出側にも乗務員に知らせる機能を備えるべきである。
これについては、当委員会からの情報提供を基に、平成23年11月21日付で国土交通省鉄道局から発出された「プラットホームからの転落事故に対する安全対策について(補足)」の通達によって、非常ボタン設置駅では運行形態等に応じ「駅からの進出時」についても考慮した効果的な対策となるよう求めており、鉄道事業者はこの通達にのっとり設備の配置や機能に配慮すべきである。
※所見とは… 『法律の規定はなく、原因関係者等がとるべき措置や一般的な努力目標等について述べるものであり、措置義務はない。』
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