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運輸安全委員会事故調査報告書【H25年5月31日公表】

投稿日時:2013-05-31 00:00:14 (1152ヒット)

【鉄道事故:1件】

番号 事業者、事故種類、発生日時・場所 所 事故概要 原   因
北海道旅客鉄道株式会社
列車脱線事故
H23.5.27(金)21:55ごろ
北海道勇払(ゆうふつ)郡(ぐん)占冠(しむかっぷ)村
石勝線清風山(せいふうざん)信号場構内
北海道旅客鉄道株式会社の釧路駅発札幌駅行き6両編成の上り特急気第4014D列車(スーパーおおぞら14号)は、平成23年5月27日、トマム駅を定刻より約2分遅れて出発した。
列車が清風山信号場に向かって走行中、4両目の車掌室にいた車掌が異音を聞くとともに振動を感じ、その旨を運転士に連絡した。運転士はそれを受けて直ちに停止手配を執り、列車は同信号場内の第1ニニウトンネル内に停止した。
その後、列車から発生した火災の煙が列車内に流入した。運転士は、トンネル内に停止した列車をトンネル外へ移動させようとしたが、列車は起動しなかった。
列車には、乗客248名、運転士1名、車掌1名及び客室乗務員2名が乗車していたが、全員が徒歩でトンネルの外に避難した。このうち、乗客78名及び車掌が負傷した。
 列車は、5両目後台車第1軸が左へ脱線していた。列車は4両目後部の動力伝達装置が損壊しており、列車の停止位置の約2㎞手前から、脱落した動力伝達装置等の部品が軌道上に点在していた。また、火災により全6両が焼損した。
本事故は、列車の4両目後部の減速機を支える吊りピンが脱落したため、次のような経過により4両目の後台車全2軸及び5両目の後台車第1軸が脱線したものと考えられる。
(1)減速機が車軸を中心として前方に回転するように垂下し、推進軸も垂下したことから、自在継手が破損し両者が分離した。
(2)分離後、減速機が更に回転して、減速機の吊り部が清風山信号場構内の12ロ分岐器のリードレールに接触したことにより、4両目の後台 車が同レールに沿って左へ押されて同台車の第1軸が脱線した後に第2軸が脱線し、その後、11イ分岐器において2軸とも復線した。
(3)垂下した減速機からかさ歯車が脱落して軌間内に落下し、5両目の後台車がこのかさ歯車に接触したことにより、同台車が押し上げられて 第1軸が脱線した。
  減速機を支える吊りピンが脱落したことについては、次のような経過であったものと考えられる。また、このような経過に至ったことについては、4両目の後台車第1軸の左車輪の円周形状不整に伴う著大な振動を受けたことが関与したものと考えられる。
 (1)減速機を支える吊りピンの溝付き六角ナットの割りピン及び同吊りピンの頭部側に取り付けられた脱出防止割りピンに、他部材との接触に より局部的な摩耗が生じた。
 (2)溝付き六角ナットが緩み、同ナットの割りピンが、緩んだ同ナットからの繰返し荷重を受けて脱落した。
 (3)溝付き六角ナットが更に緩み回転して脱落した。
 (4)減速機を支える吊りピンの頭部側に取り付けられた脱出防止割りピンが、同吊りピンからの繰返し荷重を受けて脱落した。
 (5)これらの溝付き六角ナット及び割りピンが脱落した後、減速機を支える吊りピンが減速機支え棒から抜けて脱落した。
また、本事故において、列車が焼損したことについては、脱落した減速機かさ歯車によって6両目前部の燃料タンクが破損したため、漏出した軽油がその付近の木まくらぎ周辺に飛散し、発電機若しくはエンジン後端部上面付近で出火した火が延焼拡大したことによるものと考えられる。
なお、火災による被害を特に強く受けている床下機器、運転中に高温になる機器等を分解調査した結果、いずれも外部加熱により焼損したと考えられることから、詳細な出火箇所及び出火原因を特定することはできなかった。
勧告 運輸安全委員会は、本事故の調査結果を踏まえ、輸送の安全を確保するため、北海道旅客鉄道株式会社に対し、運輸安全委員会設置法第27条第1項の規定に基づき、以下のとおり勧告する。
北海道旅客鉄道株式会社は、踏面擦傷、剝離の長さの範囲が使用限度を超えたとして扱うべき車輪を使用することがないよう、車輪踏面の状況を把握するための適切な検査時期及び検査手法を確立し、車輪踏面状態の管理を徹底すること。

※運輸安全委員会設置法第27条第1項(原因関係者への勧告)

委員会は、事故等調査を終えた場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、航空事故等、鉄道事故等若しくは船舶事故等の防止又は航空事故、鉄道事故若しくは船舶事故が発生した場合における被害の軽減のため講ずべき措置について原因関係者に勧告することができる。