運輸安全委員会事故調査報告書【H28年11月24日公表】
- 投稿日時:2016-11-24 00:00:10 (914ヒット)
【鉄道事故:3件】
番号 | 事業者、事故種類、発生日時・場所 | 事故概要 | 原 因 |
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1 |
○長崎電気軌道株式会社 ○車両脱線事故 ○H27.10.11(日)21時29分ごろ ○長崎県長崎市 ○桜町支線 諏訪神社前停留場~公会堂前停留場間(複線) 長崎駅前停留場起点 0k921m付近 |
蛍茶屋停留場発赤迫停留場行き1両編成の第375号車は、諏訪神社前停留場を定刻(21時27分)に出発した。運転士は、長崎駅前停留場方に向けて公会堂前交差点の分岐器を右曲線となる分岐線側に通過中、車両が進行方向とは異なる方へ向いたので、ブレーキ操作により車両を停止させた。 運転士が降車して確認したところ、車両は、後台車の全2軸がレールの左に脱線していた。車両には乗客4名、運転士1名が乗車していたが、死傷者はなかった。また、事故現場は道路(併用軌道箇所)の交差点内であったが、脱線した車両は、脱線前及び脱線後において自動車等と接触や衝突はしなかった。 |
本事故は、電車が、右曲線となる分岐器内を後台車第1軸の右車輪背面と、ダイヤモンドクロッシング内のガードレールの機能を持つ部位の側面とを接触させながら走行していた際に、同車輪背面が同部位に乗り上がって左に脱線し、その後、同軸左車輪が左レールに乗り上がって左に脱線し、続いて後台車第2軸も左に脱線したことにより発生したものと考えられる。 後台車第1軸の右車輪が脱線したことについては、曲線半径の非常に小さい曲線に存在するダイヤモンドクロッシング内で、同車輪の輪重の減少と背面横圧の増加が発生し、内軌側の車輪背面からの脱線に対する脱線係数が大きくなったと考えられるとともに、脱線に対する限界脱線係数が小さくなり、脱線係数が限界脱線係数を超える状態になったことによるものと考えられる。 右車輪の輪重が減少し、右車輪の背面横圧が増加したことは、電車が脱線開始点付近を走行した速度が高かったこと、脱線開始点の手前におけるバックゲージやフランジウェー幅の車両進行方向での変化が大きかったことが影響している可能性が考えられる。また、電車の駆動方式が片軸駆動で電動機が車軸の外側に装架されている吊(つ)り掛け駆動方式であることから、後台車第1軸の軸重が同第2軸に比較して小さく、力行することにより更に小さくなった可能性があり、このことが影響した可能性も考えられる。 限界脱線係数が小さくなったことは、本事故発生時において、車輪及びガードレールへの塗油状態の変化等により脱線開始点付近での車輪背面とガードレール間の摩擦係数が大きくなったこと、付近のガードレールの摩耗によってガードレールと車輪背面間の接触角度が減少していたことが影響している可能性があると考えられる。 |
再発防止策 |
本事故は、内軌側車輪背面がガード部に接触し走行している状態で、内軌側背面脱線係数が限界脱線係数を超過し、乗り上がり脱線に至った可能性があると考えられる。よって、再発防止策として、以下のような方策により、内軌側背面脱線係数を下げること及び限界脱線係数を上げることが必要であると考えられる。 (1) バックゲージや軌間等の管理 軌道変位による車輪背面横圧の上昇を抑制するために、バックゲージや軌間等の管理により、早めの軌道の整正や材料交換を行うこと。 (2) ガード部摩耗等の管理 ガード部の摩耗角度が小さくなることにより限界脱線係数が低下する。よって、摩耗角度を考慮しつつガード部の摩耗量管理を行うこと。 (3) 車輪・ガード部間の摩擦係数の抑制 車輪とガード部の摩擦力を低下することにより、内軌側背面脱線に対する限界脱線係数の上昇が期待できるため、車輪背面及びガード部への塗油等により摩擦係数を抑制し、摩擦力が過度に上昇しないようにすること。 (4) 速度の抑制 内軌側背面脱線係数は、走行速度が高くなるに応じて内軌側輪重が減少し内軌側背面横圧が増加するため、速度による影響が大きい。よって可能な限り速度を抑制すること。また、可能な限り速度変化のない運転に努めること。 なお、5.3に後述するとおり、本事故調査中の平成28年6月2日に、本事故とほぼ同じ箇所で、再度車両脱線事故が発生した。この事故については現在調査中であるが、上記の方策については一定程度実施されていたと考えられるため、本事故と異なる要素が当該事故の原因に含まれる可能性が考えられる。 本事故箇所では、平成19年から平成28年6月までに計4回の脱線事故が発生している。脱線原因の詳細はそれぞれ異なっているが、本事故箇所が半径20.0mと非常に小さい曲線半径を持つ分岐器内であることが、事故の発生の背景にあると考えられる。これは、軌道法で許されている半径の範囲内ではあるが、当該箇所における脱線事故の抜本的な再発防止を図るために、曲線半径がより大きくなるように線形改良を行うことを検討することが望ましい。 |
参考資料1(長崎電気軌道・桜町支線)
番号 | 事業者、事故種類、発生日時・場所 | 事故概要 | 原 因 |
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2 |
○流鉄株式会社 ○踏切障害事故 ○H28.3.20(日)12時22分ごろ ○千葉県松戸市 ○流山線 幸谷駅~小金城趾駅間(単線) 第10号踏切道(第4種踏切道:遮断機及び警報機なし) 馬橋駅起点2k422m付近 |
馬橋駅発流山駅行きの下り普通第47列車の運転士は、幸谷駅~小金城趾駅間を走行中、第10号踏切道(第4種踏切道)にて歩行者を認め、非常ブレーキを使用したが、列車は同歩行者と衝突した。 この事故により、同歩行者が死亡した。 |
本事故は、列車が接近している状況において、第4種踏切道である第10号踏切道に歩行者が進入したため、列車の前面右下部と衝突したことにより発生したものと推定される。
列車が接近している状況において、歩行者が踏切道内に進入した理由については、列車の接近に気付いていなかった可能性が考えられる。 列車の接近に気付いていなかったことについては、踏切に立ち入らずに直接本件列車方向を確認できるものの、生け垣等があり、見通しの妨げとなっていたことが影響した可能性があると考えられるが、歩行者が死亡したため詳細を明らかにすることはできなかった。 |
再発防止策 |
踏切保安設備(踏切警報機及び踏切遮断機)を有しない第4種踏切道は、できるだけ早期に踏切保安設備を設置するか、統合等により廃止すべきものである。 本件踏切道を含め隣接する3箇所の第4種踏切道では数度の死傷事故が発生していることから、関係者が連携して、技術的な方策や経済面を考慮した方策を検討し、早急に踏切保安設備を設置するなど、安全性を向上させることが望まれる。 |
参考資料2(流鉄・流山線)
番号 | 事業者、事故種類、発生日時・場所 | 事故概要 | 原 因 |
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3 |
○九州旅客鉄道株式会社 ○列車脱線事故 ○H28.4.16(土)1時25分ごろ ○熊本県阿蘇市 ○豊肥線 赤水駅構内 |
豊肥線熊本駅発宮地駅行き2両編成の下り気第443D列車は、赤水駅を1時24分ごろ出発した。 列車の運転士は、列車が赤水駅の大分駅方分岐器を通過直後、突き上げられるような激しい揺れを感じるとともに、携帯電話からの緊急地震速報を示す音を認めたことから、非常ブレーキをかけて列車を停止させた。 列車は、1両目の前台車全軸が右側に、2両目の前台車全軸が左側に、後台車全軸が右側に脱線していた。 列車には、運転士1名が乗務していたが、負傷はなかった。また、列車は回送扱いとしていたことから、旅客は乗車していなかった。 なお、同日1時25分ごろ、「平成28年(2016年)熊本地震」のうちの、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生し、熊本県益城(ましき)町(まち)で最大震度7の揺れが観測された。 |
本事故は、列車が赤水駅構内を走行中に、「平成28年(2016年)熊本地震」のうちの、4月16日1時25分ごろに発生した地震による、大きな地震動を受けたため、1両目前台車全軸及び2両目後台車全軸の右車輪がほぼ同時に右レールに乗り上がって右側に脱線し、その後、2両目前台車全軸の左車輪が左レールに乗り上がって左側に脱線したことにより、発生したものと推定される。 2両目前台車全軸の脱線については、1両目前台車第1軸が、脱線後に走行しながら踏切のコンクリートブロック製の舗装に乗り上げた衝撃により、列車が水平座屈し、2両目前台車によってレールに大きな左方向の荷重がかかり、レールを変形させたことから発生した可能性があると考えられる。 |
参考資料3(JR九州・豊肥線)
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H30年10月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H30年9月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H30年7月26日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H30年6月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H30年3月29日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H30年2月22日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H30年1月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年12月21日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年11月30日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年9月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年8月31日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年7月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年6月29日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年5月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年4月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年3月30日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H29年2月23日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H28年12月15日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H28年11月24日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H28年9月29日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H28年7月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H28年6月30日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H28年4月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H28年3月31日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H28年2月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H28年1月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年12月17日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年11月26日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年10月29日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年9月17日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年8月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年7月30日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年6月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年5月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年4月23日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H27年1月29日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年11月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年10月31日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年8月29日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年7月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年6月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年5月30日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年4月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年3月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年2月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H26年1月31日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年12月20日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年11月29日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年10月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年9月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年8月30日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年7月26日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年6月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年5月31日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年4月24日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年3月29日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H25年2月22日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H24年11月30日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H24年9月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H24年8月31日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H24年7月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H24年6月29日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H24年5月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H24年4月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H24年2月24日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H24年1月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H23年12月16日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H23年10月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H23年9月30日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H23年6月24日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H23年5月27日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H23年4月22日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H23年3月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H23年2月25日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H23年1月28日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H22年12月17日公表】
- 運輸安全委員会事故調査報告書【H22年10月29日公表】