一般社団法人 日本鉄道電気技術協会

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トップ  >  事故調査報告書20151217

運輸安全委員会調査報告一覧【平成27年12月17日(木)公表】

【鉄道事故:4件】
番号

事業者、事故種類、
発生日時・場所 

事故概要  原   因 
1 


○日本貨物鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H24.9.11(火)19時26分ごろ
○北海道上磯郡木古内町
○江差線 釜屋駅〜泉沢駅間(単線)
五稜郭駅起点29k032m付近



 


 五稜郭駅発宮城野駅行き21両編成の貨物列車は、五稜郭駅を定刻(17時56分)より1時間2分遅れて出発した。泉沢駅の上り出発信号機付近で非常ブレーキが掛かり停止したため、輸送指令の指示により 運転士が降車して列車を点検したところ、9両目貨車と10両目貨車の間にあるブレーキ管ホースの連結器が外れており、9両目貨車の後台車全2軸が左側に脱線しているのを発見した。
 列車には、運転士1名と青森信号場から五稜郭駅まで運転する予定の運転士1名の2名が乗車していたが負傷はなかった。
 
 

 
 


 本事故は、列車が半径300mの右曲線を通過した際に、事故現場付近においてコキ106形式の貨車後台車第1軸の外軌側の輪重が減少し、外軌に乗り上がったことにより脱線したものと考えられる。
 外軌側の輪重が減少したことについては、事故現場付近において貨車に発生したと考えられる大きなロール振動によるものと考えられる。
 貨車に大きなロール振動が発生したことについては、運転状況、車両及び軌道の状況は、省令に基づいて定められたJR貨物及びJR北海道の基準等に則った状態であったが、
 (1) コキ106形式の懸架装置の仕様は、積荷が比較的軽量であった場合、コキ104形式と比較して減衰が小さくなり、車体のロール振動が収束しにくいもので あったこと、
 (2) 積荷が比較的軽量であり、重心が高い状態であったこと、
 (3) 事故現場付近における複合変位は、整備対象に近い比較的大きな変位量で あったこと、走行速度に対して車体のロール振動の共振が生じやすい波長成分を含んでいたことが、車体のロール振動の発生を助長させた可能性があること、
 から、これらの要因が重畳したことによるものと考えられる。
 

再発防止策
     本事故は、貨車の懸架装置の仕様、積荷の状態、事故現場付近の軌道の状態が、それぞれ脱線に対する余裕度を低下させた状況となり、これらが重畳したことにより発生した可能性があると考えられる。このため、脱線に対する余裕度を低下させないための対策について、関係者が連携して、下記の点を踏まえ総合的に検討する必要がある。

  1.  貨車の懸架装置の仕様により、中間荷重状態においてまくらばねダンパが、空車状態に対応する減衰が小さい特性となり、走行中の貨車に大きなロール振動が発生したことが脱線の発生に大きく関与した可能性が考えられることから、JR貨物は、懸架装置が適正な減衰領域で使用されること、及び積荷の積載量にかかわらず適正な減衰が得られる懸架装置を設備することについて検討すること。
     
  2.  積荷の重心が高かったことも要因の一つである可能性が考えられることから、JR貨物は貨物利用運送事業者等と連携して、当面の間、必要に応じて使用される貨車の特性を加味した積載方法を検討すること。
     
  3.  事故現場付近の複合変位に、整備対象に近い比較的大きな変位量があったこと、及び走行速度に対して車体のロール振動の共振が発生しやすい波長成分を含んでいたことが要因の一つであったことから、貨車や列車の運行形態に対応する、より効果的な軌道変位の管理方法について検討すること。

     なお、これらの検討に当たっては、鉄道事業者、車両メーカー、貨物利用運送事業者、荷主及び研究機関等の関係団体における連携と、国土交通省の適切な対応が必要と考えられる。
     


 

番号

事業者、事故種類、
発生日時・場所 

事故概要  原   因 


○日本貨物鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H26.6.22(日)4時12分ごろ
○北海道上磯郡木古内町
○江差線 泉沢駅〜札苅駅間(単線)
五稜郭駅起点33k179m付近



 


 札幌貨物ターミナル駅発宇都宮貨物ターミナル駅行き21両編成の貨物列車は、五稜郭駅を定刻(3時38分)に出発した。
 列車は、札苅駅構内を約69km/hで走行中、突然ブレーキ管の圧力が低下するとともに自動的に非常ブレーキが動作し、停止した。
 停止後、運転士が列車を確認したところ、列車の20両目の後台車全2軸が右に 脱線していた。さらに、21両目は20両目と分離し、20両目から約17m後方に停止していた。
 列車には運転士1名が乗務していたが、負傷はなかった。

 
 


 車体に顕著なロール振動が励起されたことについては、乗り上がり開始地点の手前の軌道に整備の対象となる大きな複合変位が存在していたためと考えられる。
 外軌側車輪の横圧が増加したことについては、曲線半径を小さくする側の比較的 大きな通り変位が存在したことが影響した可能性があると考えられる。
 また、整備の対象となる大きな複合変位が存在したことについては、高速軌道   検測車により計測された整備の対象となる複数種別の複合変位の存在を担当の現業機関で 認識できなかったためであり、それには現業機関に計測結果を伝達して補修の要否を決める方法が不適切であったこと、現業機関での複合変位に関する知識が不足して いたことが関与した可能性があると考えられる。
 積荷の偏りが実際に脱線の発生に関与したかどうかを明らかにすることはできな かったが、事故直前の積載状態によっては、脱線を助長する要因となった可能性が あると考えられる。
 
 

再発防止策
     〇複合変位の適正な管理

     今後適切に複合変位が管理されるために、以下のことが必要である。

  1.  複数の種別からなる複合変位の管理方法について、現業機関の担当者がその主旨を正しく理解し、実行するように教育、訓練すること。

     
  2.  重複した複合変位の種別を正しく認識するためには、高速軌道検測車からの情報が限定されたものであることを理解し、適切な複合変位の割り出し方法に習熟すること。

     
  3.  基準に達した複合変位がそれぞれ重複して存在する場合、並びに該当する変位が著しくその基準値を超過する場合の補修の期限や速度制限等の対応方法について、早急に検討して適切に定めておくこと。

     これらのことを徹底し定着させるためには、JR北海道では、複合変位の管理に関して、その目的と主旨を正しく理解させるために社員を教育するとともに、運用マニュアルの改善などを図ることが必要である。
     さらに、複合変位を含む軌道管理の適切な運用のためには、軌道検測−複合変位の割り出し−補修計画の策定−補修の実施全体が管理される必要があり、これらに対して多重チェック体制が有効に機能するよう、適切な対応が継続されることが必要である。
     なお、高速軌道検測車からの複合変位に関する情報としては、全ての種別と位置が明示されることが望ましいので、今後の高速軌道検測車のシステムプログラムの改修時等に考慮すべきである。

     〇偏積の防止を目的とした積荷の管理

     積荷の左右偏積を防止する対策は、平成24年4月26日に発生した江差線貨物列車脱線事故の再発防止策として、本事故の発生とほぼ同時に、JR貨物及び利用運送事業者により対応が開始されている。
     現実に偏積を防止するには、貨物が大量で多様であることから、積荷の積付けが適切に管理されるための仕組みが確実に機能する必要がある。一方、個別のコンテナに対しては、積み込み時の積載状態の把握と、荷役及び走行中の外乱で貨物が容易に移動しない積付け方法が必要である。
     これらが効果的に機能するように、積荷の管理の仕組みが早期に安定して稼働されることが望まれる。
     


 

 

 

番号

事業者、事故種類、
発生日時・場所 

事故概要  原   因 


○日本貨物鉄道株式会社
○列車脱線事故
○H25.8.17(土)1時5分ごろ
○北海道二海(ふたみ)郡八雲(やくも)町
○函館線 八雲駅〜山越駅間(複線)
函館駅起点79k453m付近



 


 札幌貨物ターミナル駅発、福岡貨物ターミナル駅行き21両編成の貨物列車は、平成25年8月16日(金)、東室蘭操車場を定刻(23時33分30秒)に出発した。
 八雲駅を通過後、列車の運転士は、速度約40km/hで惰行運転中、前方約100mの線路上に木等の支障物を認め、非常ブレーキを扱った。その直後、木と衝突して沈み込むような衝動を感じ、下から突き上げるような鈍い音を聞いた。
 その後の調査により、1両目の機関車(車両は機関車を含めて前から数え、前後左右は列車の進行方向を基準とする。)の中間台車全2軸並びに3両目及び4両目の貨車のそれぞれの前台車第2軸が脱線し、5両目の貨車の前台車第2軸がレールから浮き上がって停止していた。また、4両目及び5両目の下の道床が流出していた。
 列車には運転士1名が乗車していたが、負傷者はいなかった。

 
 


 本事故は、熱田川から氾濫した大量の水等により道床が流出して軌道が変形し、線路が宙づり状態となった箇所を貨物列車が走行したことにより、さらに軌道が大きく変形したため、1両目の機関車の中間台車全軸、及び3両目から5両目の貨車の前台車2軸目が脱線した可能性があると考えられる。
 熱田川が氾濫したことについては、観測史上上位に挙がるような量の降雨などの影響により、熱田川流域の地表が飽和状態となっていたことで、降雨が直接流れ込んだことにより、熱田川の水量は道路下の函渠及び鉄道下の函渠が流下できる流量を上回り、道路下の函渠入口付近から氾濫した可能性があるためと考えられる。
 道床が流出し線路が宙づり状態となったことについては、流量の増加した水が流路より溢れて下り線側に設置していた止水のためのコンクリートブロックや土嚢を押し流して、水等が軌道上に流入したことが、道床の形状を保持する耐力を低下させ、道床流出に繋がった可能性があると考えられる。
 
 
 

再発防止策
     熱田川流域の降雨が地表から直接流れ込み、熱田川の流量が道路下の函渠及び鉄道下の函渠の流下できる流量を超えた可能性が考えられることから、これまでの降雨や氾濫した状況、鉄道施設の被害状況を踏まえ、関係者が連携して河水を鉄道施設の下流側へ確実に流水するための施設整備や改修を行う必要がある。

     


 

番号

事業者、事故種類、
発生日時・場所 

事故概要  原   因 


○北海道旅客鉄道株式会社
○その他(鉄道事故等報告規則第4条第1項第10号の「前各号に掲げる事態に準ずる事態(第8号の「車両の走行装置、ブレーキ装置、電気装置、連結装置、運転保安設備等に列車の運転の安全に支障を及ぼす故障、損傷、破壊等が生じた事態」に係る鉄道重大インシデント)
○H25.5.17(日)19時51分ごろ
○北海道二海(ふたみ)郡八雲町
○函館線 八雲駅構内 




 


 札幌駅発上野駅行き14両編成の寝台特急列車(臨時寝台特急北斗星号)の本務車掌は、八雲駅を定刻(19時51分)に出発した後、車内巡回をしていたところ、4両目デッキの左側の旅客用乗降口の扉がほぼ全開状態となっていることを認めたため、すぐに手で閉扉した。
 本務車掌から報告を受けた輸送指令は、列車の運転士に対し、落部駅に臨時停車するように指示をした。
 列車には、乗客166名、乗務員3名(運転士、本務車掌、補助車掌)及び食堂車乗務スタッフ5名が乗車していたが、転落等による負傷者はいなかった。
 なお、同列車に運用された車両(客車12両)は、東日本旅客鉄道株式会社の所属である。

 
 


 本重大インシデントは、列車が八雲駅出発時において、本務車掌が左側の旅客用乗降口の扉を閉扉操作した後、4両目左側旅客用乗降口の扉が閉じていなかったにもかかわらず、このことに気付かずに列車運転士に対し出発合図を送り列車を出発させたため、扉が開いた状態で走行したことにより発生したものと推定される。
 本務車掌が扉が閉じていないことに気付かずに列車運転士に対し出発合図を送ったことについては、本務車掌が、乗降口の扉の閉扉操作をした後、車側灯及び5両目車掌室内に設置してある全閉扉表示灯の双方を十分に確認しなかったことによると推定される。
 なお、4両目左側旅客用乗降口の扉が閉じていなかったことについては、車体台枠構体のさびによって扉下の下レールが下レール座ごと浮き上がり、扉下面と下レール座との隙間が狭くなったため、扉を閉扉した際に、全開位置から僅かに閉じた位置で下レールに引っかかったことによるものと考えられる。
 
 
 

再発防止策
  1.  車掌の取扱いについて

     列車出発時において、車掌の基本的な確認事項である旅客用乗降口の扉の閉扉確認(車側灯及び全閉扉表示灯の確認)が十分ではなかったと推定されること、及び基本動作の指差称呼などを適切に行っていなかったことから、JR北海道は、列車出発時の車掌の取扱いについて、扉の閉扉確認を含む一連の動作が適切に励行されているかを再確認するとともに、車掌に対して、取扱いを誤ったことにより発生するおそれのある危険な事象を改めて認識させ、繰り返し教育訓練を実施し、基本的な動作を徹底するなどして安全行動を身につけさせることが必要である。

     また、旅客用乗降口の扉が閉扉したことを確認するための全閉扉表示灯が車掌室に設置されているが、本務車掌は、その点灯確認をしていないと推定されることから、JR北海道は、車掌に対して、客車列車において全閉扉表示灯を設置している目的を改めて認識させるとともに、全閉扉表示灯を設置した列車に不定期に乗務することとなった際には、出発点呼時などにおいて、全閉扉表示灯の確認の再徹底を繰り返し行うことが必要である。

     さらに、列車走行中に当該旅客用乗降口の扉が開いていることを認めた際に列車を停止させるための手配などが行われていなかったことなど適切さを欠く行動が見られたことから、異常発生時における取扱いについて、実際の取扱いの場面での行動につながるよう、安全に対する意識の向上を図る必要がある。
     
  2.  車両の検査及び構造について

     本務車掌が車掌スイッチを扱い、旅客用乗降口の扉を閉扉した際、4両目左側旅客用乗降口の扉下の下レールが下レール座ごと、車体台枠構体のさびによって浮き上がり、扉下面との隙間が狭くなったため、当該旅客用乗降口の扉が全開位置から僅かに閉じた位置で下レールに引っかかったことにより、開扉状態になったと考えられる。

     このことから、本重大インシデントを踏まえ、客車列車を所有するJR東日本は、全般検査で実施している扉下面と下レール座の隙間管理について、例えば、全般検査以外の検査においても隙間管理を実施するなど車両の経年、使用環境及び運用実態を考慮したメンテナンスを実施することが望ましい。
     


 

 
 
〔貨物列車走行の安全性向上に関する意見〕 

 国土交通大臣への意見(抜粋)

 

 平成24年4月から26年6月までの間に江差線において発生した3件の貨物列車脱線事故の調査結果を集約し、これまでの調査により得られた知見を踏まえ、車両・軌道・積荷の積載などの因子が複合的に組み合わさった結果発生する貨物列車脱線事故の防止と安全性の向上に向けて関係者が連携して取り組むべき課題について、整理を行った。

 当委員会は、今般整理した課題について関係者が検討を進め貨物列車走行の安全性を向上するため、国土交通大臣に対し、運輸安全委員会設置法第28条の規定に基づき、下記の通り意見を述べる。

  1.  江差線の3件の貨物列車脱線事故調査報告書の内容及び本意見別添について、貨物列車が路線を走行する旅客鉄道事業者、貨物鉄道事業者、貨物利用運送事業者、鉄道車両メーカー等に対し、広く周知を行うこと。

     
  2.  各事故調査報告書で記載された再発防止策が円滑に実施されるよう、各鉄道事業者等に対し、関係法令に基づき指導監督を行うこと。

     
  3.  貨物列車走行の安全性向上について、貨車の設計など車両関係、各線区の路線規格や軌道の管理方法など軌道関係、積載方法など積荷関係等について、鉄道事業者、鉄道車両メーカー、貨物利用運送事業者、荷主、研究機関等の関係団体が連携・協調して検討を進めるよう対処すること。
     


 

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